映画「レッスン!」を観たあとに気になるのは、「本当にあった話なのか」「どこまで本当なのか」だと思います。
ピエール・デュレインが校長の車を壊す現場に遭遇し、その翌日に学校へ乗り込む。
居残り部屋に集められた問題児に社交ダンスを叩き込む。
ダンスコンテストで生徒が変わり、学校も変わる。映画「レッスン!」はこういう勢いで進みます。
結論から言うと、映画「レッスン!」は実在の社交ダンサー、ピエール・デュレインの取り組みが土台です。
ただし、映画の出来事がそのまま現実で起きたわけではありません。
映画は高校生、いじめ、ギャング、恋愛、賞金付きコンテストなど、観客が一度で理解できる形へ寄せています。
この記事では、ピエール・デュレインの現実の活動を先に書き、次に映画「レッスン!」で増やした出来事と減らした出来事を比べます。
自分は「泣ける話」として見るより、「何を削って何を足した映画か」を知ってから見返したほうが面白くなりました。
映画「レッスン!」は実話なのか

まずは答えをハッキリさせます。
映画「レッスン!」は実話が土台ですが、映画の筋書きはそのまま現実ではありません。
元になった人物はピエール・デュレイン
映画「レッスン!」のピエール・デュレインは架空の名前ではなく、実在の社交ダンサーのピエール・デュレインが元になっています。
ピエール・デュレインはニューヨーク市の公立学校で社交ダンスを教えるプログラムを始めた人物として紹介されています。
この取り組みは「Dancing Classrooms」と呼ばれ、1994年にピエール・デュレインがアメリカン・ボールルーム・シアターのプロジェクトとして開始した、と団体の説明に書かれています。
現実の「Dancing Classrooms」は小学生が中心
映画「レッスン!」は高校生の居残りが舞台ですが、現実の「Dancing Classrooms」は、少なくとも始まりの段階では5年生など小学生を対象に広がった、と団体側が書いています。
ニューヨークの公立学校での取り組みは、授業としての回数や流れも決まっていて、単発のイベントではありません。
ニューヨークの芸術団体データベースでは、1994年にマンハッタンの学校でピエール・デュレインが授業を担当し、そこからプログラムが形になった、という紹介もあります
映画のように「居残りを一つ預かって全部変える」ではなく、学校の中に授業として入っていく形に近いです。
映画が「そのまま実話」にならない理由
映画「レッスン!」は「校長の車を壊した生徒」「ギャングの抗争で家族を失った二人」「PTAの反発」「賞金付きコンテスト」という材料を一気に積みます。
これは映画としては分かりやすい一方で、現実の教育プログラムの記録としては派手すぎます。
実話を元にした、と紹介しつつも「fictionalized」「loosely based」といった言い方で語られることが多いのは、この脚色の量が大きいからです
自分は初見のとき、ロックとラレッタの背景が重すぎて「これは映画の都合だろうな」と感じました。
現実の学校現場にも重い事情はありますが、2時間の中に全部詰めると、どうしても作り物の匂いが出ます。
映画「レッスン!」実話のピエール・デュレインの活動と映画の違い



ここからは、映画「レッスン!」と現実の「Dancing Classrooms」を、同じポイントで比べます。比べると、映画がどこを強くし、どこを薄くしたかが見えます。
舞台の年齢が違う
映画「レッスン!」は高校生が中心で、居残り部屋に集められた生徒が「落ちこぼれ」として描かれます。
一方で、団体側の説明では「Dancing Classrooms」は5年生を入口に広がった、と明記されています。
同じ社交ダンスでも、相手が高校生か小学生かで空気が全然違います。
高校生は体も大きく、言葉も刺さりやすい。
小学生は照れと集中が入り混じる。
映画は衝突を見せたいので高校生を選んだ、と考えると納得がいきます。
問題の作り方が違う
映画「レッスン!」は「校長の車を壊す」「兄弟がギャング抗争で死ぬ」「家庭内の暴力」「酒浸りの親」など、すぐに目に見える痛みを積み上げます。
現実の「Dancing Classrooms」は、団体の説明で「人とのつながり」「友だちとの関係」「学校でのふるまい」など、授業としての狙いが書かれています。
現実の教室では、変化はもっと遅いはずです。
今日踊ったから明日謝れる、という直線にはならない。
映画はそこを直線にします。
観客が置いていかれないために、変化のスピードを上げています。
クライマックスの形が違う
映画「レッスン!」はコンテストで勝つかどうかが山場になり、賞金5000ドルがやる気の点火装置として使われます。
現実の「Dancing Classrooms」も、学んだダンスを披露したり競ったりする場があることは、団体のイベント案内から分かります。
ニューヨークでは「Colors of the Rainbow Team Match」という大会があり、子どもたちが参加するダンスの競技と交流会として告知されています。
さらに、2005年のドキュメンタリー「Mad Hot Ballroom」は、ニューヨークの公立学校の子どもたちがダンスを学び、最後に大会へ向かう流れを追った作品として知られています
映画「レッスン!」は、この「最後にみんなで踊る日」を、もっと派手な勝負にして終わらせます。
賞金やライバルの存在があると、観客の目が前を向きやすいからです。
映画は「一人の教師が空気を支配する」場面が強い
映画「レッスン!」の面白さは、ピエール・デュレインが教室に入った瞬間に場の力関係を変えるところです。
大音量で音楽を流し、目線を集め、ペアを組ませ、姿勢を直す。
ここは映画だからこそ効きます。
現実の学校では、外部講師が入っても、校内ルールや学年の空気が簡単に動かないはずです。でも映画は動かします。
だから気持ちよく見られます。
自分はここを「現実的かどうか」より「映画としての勢い」として受け取りました。
実話を知ると「続いた年数」の重みが増える
映画は短期間で結果が出ます。コンテストが来て、生徒が変わり、校長が正規プログラム化を宣言する。
現実の「Dancing Classrooms」は1994年に始まり、団体の資料では多くの子どもに広がったと書かれています。
この「続いた年数」は、映画のラストよりずっと重いです。
映画は感動で終わる。現実は翌年も翌々年も教える。
そこが一番すごいと自分は思います。
まとめ
映画「レッスン!」は実話が土台で、ピエール・デュレインが公立学校で社交ダンスを教えた活動が出発点です。
ただし映画の出来事は、現実の「Dancing Classrooms」をそのまま再現したものではありません。
高校生を主役にし、居残り、破壊事件、恋愛、賞金、PTA騒動を入れて、2時間の中で山場を作っています。
現実の「Dancing Classrooms」は小学生を入口に広がったと団体が書き、子どもたちが参加する大会も続いています。
だから結論はこうなります。映画「レッスン!」は実話の「種」を使った映画で、現実の出来事の「順番」と「濃さ」は映画用に作り直されています。
映画で泣けたなら、それで十分です。
さらにもう一段欲しいなら、「Mad Hot Ballroom」を観ると、子どもたちが踊れるようになるまでの時間と、先生が同じ説明を何度も繰り返す場面が見えてきます。
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