映画「泣き虫しょったんの奇跡」は、将棋棋士の夢を一度あきらめた男性が、長い年月を経て再びプロ棋士になった実話をもとにした作品です。
2018年に公開され、主演を務めたのは松田龍平です。
派手な勝負の世界を描く将棋映画というよりも、長い時間をかけて夢を追い続けた一人の人間の人生を丁寧に追った作品として話題になりました。
将棋の世界では、若い頃に結果を出さなければプロ棋士になる道はほとんど閉ざされます。
年齢制限という制度があるためです。
映画「泣き虫しょったんの奇跡」は、その厳しい制度の中で一度夢を断たれた男性が、制度の例外としてプロ棋士になった出来事を描いています。
映画を観ていると「実話とはどこまで同じなのか」「モデルになった人物は誰なのか」という疑問が自然と浮かびます。
この記事では映画のモデルとなった実在の人物、そして映画と現実の違いを詳しく紹介します。
作品を見終えたあとに調べたくなる部分を、できるだけ分かりやすくまとめました。
映画「泣き虫しょったんの奇跡」実話のモデルは誰?

映画「泣き虫しょったんの奇跡」の主人公のモデルになった人物は、将棋棋士の瀬川晶司です。
瀬川晶司は1970年生まれの将棋棋士で、2005年に史上初めて「プロ編入試験」に合格してプロ棋士になりました。
この出来事は将棋界でも大きなニュースになり、新聞やテレビでも広く取り上げられました。
瀬川晶司の将棋人生
瀬川晶司は小学生の頃から将棋が強く、将棋界の養成機関である奨励会に入ります。
奨励会はプロ棋士になるための唯一の道と言われている組織です。
しかし奨励会には年齢制限があります。
26歳までに一定の段位へ到達できなければ退会しなければなりません。
瀬川晶司は実力がありながらも結果が出ず、26歳で奨励会を退会することになります。
この時点でプロ棋士になる道は閉ざされました。
将棋を続ける人もいますが、多くの人はここで将棋から離れて普通の仕事に就きます。瀬川晶司も会社員として働き始めました。
しかし瀬川晶司は将棋を完全にやめたわけではありません。
アマチュア大会に出場し続け、将棋を指し続けました。
その結果、アマチュア大会で優勝を重ねるようになります。アマチュアトップクラスの強さを持つ存在として知られるようになりました。
その頃、将棋ファンや棋士の間で「瀬川晶司をもう一度プロ試験に挑戦させるべきではないか」という声が上がります。
こうして将棋界は特例として「プロ編入試験」を実施しました。
瀬川晶司はその試験に合格し、35歳でプロ棋士になりました。
映画タイトルの意味
映画のタイトル「泣き虫しょったん」は瀬川晶司のあだ名です。
瀬川晶司は子どもの頃、将棋で負けるとよく泣いていたそうです。
周囲の将棋仲間がその様子を見て「泣き虫しょったん」と呼ぶようになりました。
映画ではこのあだ名が主人公の象徴として使われています。
勝負に負けて泣くほど悔しがる気持ちが、長い年月を経ても将棋をやめなかった理由につながっていると感じます。
タイトルだけ見ると軽い印象がありますが、内容を知ると意味が変わって見えてきます。
映画「泣き虫しょったんの奇跡」と実話の違い



映画「泣き虫しょったんの奇跡」は実話をもとに作られた作品ですが、実際の出来事をそのまま再現したわけではありません。
映画という限られた時間の中で物語を分かりやすく伝えるため、登場人物の役割や出来事の順序が整理されています。
実際の瀬川晶司の人生はもっと長い時間の積み重ねで成り立っており、映画ではその流れを二時間ほどの作品に収めるために構成が調整されています。
ここでは映画と現実の違いについて、いくつかの視点から見ていきます。
周囲の人物の描かれ方
映画では瀬川晶司を支える存在として家族や将棋仲間、棋士などが登場します。
物語の中では瀬川晶司の周囲にいる人物が比較的少人数で描かれており、それぞれがはっきりした役割を持っています。
しかし実際の瀬川晶司の人生では、もっと多くの人が関わっていました。
将棋仲間や大会関係者、将棋ファンなどさまざまな人が瀬川晶司の活動を支えています。
映画ではストーリーを分かりやすくするため、複数の人物の役割を一人の登場人物にまとめている部分があります。
実際には何人もの人が協力していた出来事でも、映画では一人の人物が代表して登場する形になっています。
このような整理によって観客が物語を理解しやすくなっています。
また映画では将棋仲間と研究する場面や対局の場面が印象的に描かれていますが、実際にはもっと長い年月の中で関係が築かれてきました。
将棋の世界では研究会や大会などを通して人間関係が少しずつ深まっていきます。
映画ではその長い時間の流れを圧縮して表現しているため、実際よりも出来事が短期間で起こっているように見える場面があります。
プロ編入試験までの道のり
映画では瀬川晶司が再びプロ棋士を目指す流れがドラマとして描かれています。
奨励会を退会した後、アマチュア大会で活躍する姿が描かれ、周囲の人たちの応援によってプロ編入試験が実現する流れになっています。
物語としては非常に分かりやすく整理されています。
しかし実際の出来事では、プロ編入試験が実現するまでにかなり長い時間がかかっています。
将棋ファンや棋士の間で「瀬川晶司に再挑戦の機会を与えるべきではないか」という議論が広がり、その声が将棋連盟に届くまでには多くの経緯がありました。
制度を作るかどうかという問題は将棋界にとって大きなテーマだったため、内部でも慎重な議論が続いていたと言われています。
プロ編入試験という制度は当時の将棋界では前例がありませんでした。
奨励会を退会した後にプロ棋士になる道は基本的に存在しなかったため、新しい制度を作ること自体が大きな決断だったのです。
映画ではこの複雑な議論の過程は詳しく描かれていませんが、現実では多くの人が関わりながら制度が整えられていきました。
対局の描写
映画の中で印象に残るのが将棋の対局シーンです。
駒を置く音や考える時間の静けさが丁寧に表現されており、将棋の勝負の緊張感が画面から伝わってきます。
対局の場面は映画の見どころの一つになっています。
ただし実際の将棋の対局は映画よりもはるかに長い時間をかけて行われます。
特に重要な対局では朝から夜まで続くことも珍しくありません。
プロ編入試験の対局も非常に長い勝負だったと言われています。
映画ではテンポを保つために対局の時間や進行が整理されており、実際よりも短い時間で勝負が決まるように描かれています。
また映画では対局の場面に音楽やカメラワークが使われており、勝負の緊張感が強調されています。
現実の対局は静かな部屋で行われるため、映画のような演出はありません。
それでも駒を動かす一手一手には強い緊張があり、その空気を映画はかなりリアルに表現していると感じました。
映画と現実を比べてみると細かい違いはありますが、瀬川晶司が長い年月をかけて夢を実現したという核心の部分はしっかりと描かれています。
映画は実際の出来事をもとにしながら、観客に分かりやすい形で再構成された作品と言えるでしょう。
映画「泣き虫しょったんの奇跡」を見て感じたこと
映画「泣き虫しょったんの奇跡」を見たとき、最初に感じたのは時間の長さでした。
将棋映画というと派手な勝負を想像する人が多いと思いますが、この映画は人生の時間を丁寧に描いています。
奨励会を退会した後の生活は決して楽ではありません。
普通の会社で働きながら将棋を続ける生活は想像以上に大変だったはずです。
将棋の世界から離れてしまう人が多い中で、瀬川晶司は将棋盤の前に座り続けました。
映画の中で印象に残ったのは、瀬川晶司が将棋を指している時間の静けさです。
大きな音楽が流れるわけでもなく、静かな部屋で駒を動かす場面が続きます。
その時間を見ていると、瀬川晶司がどれだけ将棋を好きだったのかが伝わってきます。
もう一つ印象に残ったのは、周囲の人の存在です。
瀬川晶司の挑戦は一人だけの努力ではありません。
家族や友人、将棋関係者が支え続けました。
映画を見ていると、将棋という競技の裏側には人間関係があることがよく分かります。
映画のラストでプロ棋士になった場面は感動的ですが、個人的にはそこまでの時間の方が強く心に残りました。
夢を失ったあとにどう生きるのかという問題は、多くの人に共通するテーマだと思います。
将棋の世界を知らない人でも、この映画は十分に楽しめます。
むしろ将棋の知識がなくても理解できるように作られていると感じました。
夢を追うことの難しさと、それでも続ける人の強さを描いた作品だと思います。
映画を見終えたあと、瀬川晶司という人物の実際の人生を調べたくなりました。
映画だけでも十分に感動できますが、実際の出来事を知るとさらに深く作品を理解できます。映画と現実を比べながら見ると、この作品の面白さがよく分かります。
将棋映画として見るよりも、一人の人生の記録として見る方が印象に残る作品でした。
静かな映画ですが、見終わったあとに長く考えさせられる映画だと思います。
まとめ
映画「泣き虫しょったんの奇跡」は、将棋棋士の瀬川晶司の実話をもとに作られた作品です。
瀬川晶司は若い頃にプロ棋士養成機関である奨励会を退会し、プロ棋士になる道を一度失いました。
しかし会社員として働きながら将棋を続け、アマチュア大会で結果を残し続けます。
その努力と実力が評価され、将棋界では前例のなかったプロ編入試験が実施されることになりました。
瀬川晶司はその試験に合格し、35歳でプロ棋士になりました。
この出来事は将棋界でも大きなニュースとなり、長い年月をかけて夢を実現した実話として多くの人に知られるようになりました。
映画ではその人生の流れがドラマとして描かれています。
映画と実際の出来事を比べると、登場人物の役割や出来事の順番などは映画として分かりやすく整理されています。
ただし、奨励会を退会した後も将棋を続けたこと、周囲の人に支えられながら再びプロ棋士を目指したことなど、物語の中心となる部分は実話に基づいています。
映画「泣き虫しょったんの奇跡」は、将棋の勝負だけを描いた作品ではありません
。夢を失ったあとにどう生きるのか、そして時間が経っても挑戦することはできるのかというテーマを丁寧に描いた作品です。
将棋を知らない人でも、瀬川晶司の人生を通して努力や挑戦の意味を感じることができる映画だと言えるでしょう。
最近公開された作品から過去の名作まで、日本で実際に起きた事件を描いた映画をまとめて紹介しています。

コメント