映画「ファースト・マン」は、人類初の月面着陸を描いた壮大な作品です。
けれども、ただの宇宙映画ではありません。
静かな映像の中にあるのは、喪失と再生、そして家族との絆。
派手な演出を期待した人からは「つまらない」という声もありますが、観る人の心の状態によって印象がまったく変わる不思議な映画です。
この記事では、「ファースト・マン」は本当につまらないのか?
それとも深く心に残る傑作なのか?
実際の感想や口コミを交えながら、その魅力と評価を丁寧に紹介します。
映画「ファースト・マン」はつまらない?面白い?

映画「ファースト・マン」は、月面着陸という壮大なテーマを扱いながらも、意外なほど静かな作品です。
多くの人が“宇宙映画=ド派手な映像とスリル”を期待していたのかもしれません。
けれどもこの映画が描くのは、人類の挑戦ではなく、ひとりの人間の孤独と決意。
そこにギャップを感じて「地味」「テンポが遅い」と評価する人が多いのも納得できます。
特に前半は、訓練や家族とのやりとりが中心で、アクション要素は控えめです。
ジェミニ計画の場面でさえ、観客を驚かせるような演出ではなく、あくまでリアルさを重視しています。
観客が求める興奮とは違う方向へ物語が進むため、退屈だと感じる人もいるでしょう。
私自身、最初の30分ほどは「静かすぎるな」と感じました。
宇宙映画というより、淡々とした人生記録を見ているような感覚です。
けれども、その静けさが後半で効いてきます。
ニール・アームストロングの無表情の裏に、どれほどの感情が隠されているのか。
それを理解した瞬間、この映画の意味が一気に変わります。
「静かな映画」だからこそ心に残る
この作品をつまらないと感じる人の多くは、テンポの遅さに戸惑うのだと思います。
けれども、監督デイミアン・チャゼルは意図的に“静寂”を使っています。
アポロ11号の発射シーンでは、音楽を排除して振動音と呼吸音だけを残しています。
観客に「体験している」感覚を与えるための演出です。
まるで宇宙服の中に閉じ込められているような圧迫感。私はこの場面で息をするのを忘れてしまいました。
派手な爆発も、誇張されたヒーロー描写もありません。
けれども、そのリアルさこそが“人類の一歩”の重みを感じさせます。
この作品は、“退屈”の中に潜む“緊張”を描いているのです。
映像のリアリティが生む「無音の迫力」
「ファースト・マン」はIMAXカメラを使って撮影されています。
細部まで映し出される宇宙船の内部は、まるで手作業で作られた金属の箱のよう。
宇宙のシーンでもBGMはほとんどなく、エンジン音と呼吸音が支配しています。
月面着陸の場面に入ると、突然、音が消えます。無音の中で映る月の地表。
ここで初めて“静けさの意味”が分かりました。
音のない世界で、一歩を踏み出す勇気。
それを観客に体感させるための演出だったのです。
個人的に最も印象に残ったのは、ニールが月面に娘カレンの形見をそっと置く場面です
。映画の中では言葉にされませんが、そこに込められた想いが痛いほど伝わります。
音も説明もいらない。
ただ月の上に残された小さな祈り。
それがこの映画の核心でした。
映画「ファースト・マン」評価や口コミを紹介
SNSやレビューサイトを見ていると、「ファースト・マン」を高く評価する声も多くあります。
特に印象的なのは、“派手さがないからこそリアルだった”“宇宙映画というより人間ドラマだった”という感想です。
観客の多くが共感しているのは、ニール・アームストロングの“静かな強さ”です。
多くを語らない主人公が、痛みや喪失を抱えながらも使命を果たす。
その姿に「本当の勇気」を見たという声が目立ちます。
中には、「まるでドキュメンタリーのようだった」という感想もありました。
確かにこの映画は、派手な演出を排し、淡々とした日常と危険の狭間を描いています。
そのリアリティが、他の宇宙映画にはない魅力を作り出しているのです。
海外での評価と受賞歴
海外でもこの作品は高い評価を受けています。
アカデミー賞では視覚効果賞を受賞し、撮影・音響部門でもノミネートされました。
批評サイト「Rotten Tomatoes」では肯定的なレビューが多く、批評家スコアは80%前後を維持しています。
特に注目されたのは、デイミアン・チャゼルの演出と、ライアン・ゴズリングの繊細な演技。
感情を大きく表現しないスタイルが“アームストロングそのもの”だと評価されています。
日本での口コミと感想
日本では意見が分かれています。
「退屈だった」「眠くなった」という感想もあれば、「生々しい映像が忘れられない」「宇宙ではなく人間を描いた傑作」という声もあります。
個人的には、どちらの意見も理解できます。
宇宙映画を“刺激的なエンタメ”として見るか、“人間の記録”として見るかで評価が変わるのです。
観る人の感性によって印象がまったく違う映画、それが『ファースト・マン』なのだと思います。
私自身は“静かすぎる映画”がこんなにも心に残るとは思いませんでした。
あのラスト、ガラス越しに妻と目を合わせる場面。
言葉を交わさないからこそ、すべてが伝わる。
あの一瞬のために、この2時間があったのだと感じます。
映画「ファースト・マン」の魅力
「ファースト・マン」を“つまらない”と切り捨てるのはもったいないと思います。
なぜなら、この映画は「静かな時間の中で何を感じ取るか」を問う作品だからです。
派手な展開や感動の押しつけはなく、観る側が想像する余白がある。
そこにこそ深い魅力があります。
家族ドラマとしての側面
多くの人が見落としがちなのが、アームストロング家の物語としての側面です。
娘を失い、家族との関係が少しずつすれ違っていく中で、ニールはどう生きたのか。
宇宙に行く理由が“栄光”ではなく、“喪失からの再生”だったという点に気づくと、作品の印象がまるで変わります。
家族を置いていく罪悪感、成功しても満たされない孤独。
そうした人間の複雑な感情が、淡々とした演出の中に流れています。
映画としての完成度の高さ
デイミアン・チャゼル監督の演出は、前作『ラ・ラ・ランド』とは正反対です。
あちらが“夢と情熱の爆発”だとすれば、『ファースト・マン』は“抑制と沈黙の美学”です。
音の使い方、カメラの揺れ、照明の落とし方までがすべて計算されていて、まるで絵画のような映像。
特に、月面着陸のシーンで音が完全に消える瞬間は圧巻でした。
あの静けさに、すべての意味が込められているように感じます。
最後に残るのは“人間の小さな一歩”
映画を観終わって感じたのは、“偉業の裏には必ず痛みがある”ということです。
世界中が歓声を上げる中で、アームストロングが見せた静かな表情。
その裏に、娘や仲間を失った悲しみ、家族に背を向けてきた後悔、そしてそれでも歩み続ける覚悟がありました。
「小さな一歩」という言葉は、人類のためだけでなく、自分自身への言葉でもあったのではないでしょうか。
映画を観るタイミングで印象が変わる
この作品は、観る時期や心の状態によって感じ方が変わる映画です。
忙しいときや刺激を求めているときには退屈に思うかもしれません。
けれども、何かを失った経験があるときや、自分を見つめ直したい時期に観ると、まったく違う感情が湧いてきます。
私はこの映画を夜に一人で観ました。
エンドロールが流れる頃には、静かな涙が流れていました。
決して劇的な感動ではなく、心の奥で小さく鳴る共鳴のようなもの。
それが『ファースト・マン』の魅力だと思います。
まとめ
「ファースト・マン」は、静かで重厚な映画です。
月面着陸という偉業の裏にあるのは、喪失を抱えながらも前へ進む人間の姿。
観る人によって“つまらない”とも“人生を変える映画”とも感じられる、不思議な深みを持っています。
宇宙映画のようでいて、実は家族や愛、そして孤独を描いた人間ドラマ。
音のない月面での一歩は、アームストロングだけでなく、すべての人にとっての“再出発”の象徴でもあります。
派手さよりも静けさに心が動く人にこそ、この映画は深く刺さるでしょう。

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