南米ボリビアの奥地に迷い込んだ青年のサバイバルを描いた『ジャングル ギンズバーグ19日間の軌跡』は、初めて観たとき「こんなこと現実にある?」と正直思ってしまいました。
でも調べてみると、これはまぎれもなく実話に基づいた物語。
フィクションのような極限の出来事が、実際に起きていたということに驚かされます。
映画「ジャングル ギンズバーグ19日間の軌跡」は実話?
ただのサバイバル映画と思って観始めたら、これは実際にあった話だったと知って驚かされた人も多いはずです。
『ジャングル ギンズバーグ19日間の軌跡』は、イスラエル出身のヨッセイ・ギンズバーグという青年の1981年の体験に基づいています。
作り話では出せない、生々しさやリアルな恐怖が画面から伝わってくるのは、そのためかもしれません。
ジャングルの中での極限状態、孤独、絶望、そして生きたいという本能。
そのすべてが、脚色ではなく、本人の記憶と証言によって描かれたものです。
実話ベースの映画とはいえ、ここまでリアルだと、もはやドキュメンタリーに近い印象すら残ります。
ヨッセイ・ギンズバーグ本人の証言が元になっている
ヨッセイは20代前半、世界を見たいという思いだけで旅に出た若者でした。
南米ボリビアで偶然出会った仲間とともに、幻の部族を探すためジャングル奥地へと入っていきます。
その判断が、後にとんでもない運命を呼ぶことになるわけですが、当時は好奇心と冒険心しかなかったのでしょう。
彼自身が遭難後に書いた自伝『ジャングル』が映画の原作となっており、そこに記された出来事が忠実に再現されています。
映画に出てくるキャラクターの名前や行動、トラブルのきっかけ、遭難後の苦しみなど、実際にヨッセイが体験した通りに描かれている部分が多いです。
読んでいても、あまりの過酷さに「よく生き延びたな…」と息をのんでしまいました。
フィクションでは出せない苦しみの描写がある
19日間のジャングル生活。言葉にすると一瞬ですが、実際には永遠にも感じる時間だったはずです。
水も食料もない。足は腫れ、虫が皮膚に卵を産みつけ、幻覚が見えるほどに精神が削られていく。
映画ではその描写があまりにリアルで、観ていて思わず目を背けたくなるようなシーンもありました。
例えば、寄生虫が足の中に入り込み、ナイフで取り除こうとする場面。
あれは映画の演出だろうと思いたくなりますが、実際に彼が体験した出来事です。
本人がインタビューで「自分の足の中に命が蠢いているのを感じた」と語っており、その気持ち悪さや恐怖は想像を超えています。
そんな極限状態で、なぜ諦めなかったのか。
それはきっと「生きたい」という本能しかなかったのでしょう。
助けを呼ぶまでの道のりにも事実が詰まっている
遭難から19日後、ヨッセイは奇跡的に地元の先住民と出会い、命を救われます。
映画ではこの部分も劇的に描かれていますが、実際に起きた出来事です。
仲間のひとりであるマーカスは消息を絶ち、生存していた仲間のケヴィンが懸命に探し回った末に、なんとかヨッセイを見つけ出したといわれています。
救助されたときの姿は、まさに「人間の限界を越えた」状態だったと証言されています。
骨と皮だけになった身体、泥と血にまみれた顔、そしてかろうじて動く足。
それでも、目には確かに「生きている」光が宿っていたと言われています。
こういう細部まで映画は拾っていて、そこに事実の重みがのしかかってきます。
映画「ジャングル ギンズバーグ19日間の軌跡」実話と映画の比較
映画はかなり忠実に再現されている印象を受けましたが、よくよく調べると、いくつかのシーンには映画的な脚色も加わっていたようです。
たとえば、川で流されて急流に呑まれるシーンは、実際にも危険な場面があったのは事実ですが、映画ほどのスリル感はなかったと言われています。
あれはあくまでも観る側の緊張感を引き出すための工夫ということでしょう。
体感的には、現実の方がもっとジワジワと体力も精神も削られていく印象で、映画のような派手なアクシデントよりも、「じわじわくる地獄」のような怖さがあったと想像しています。
仲間たちの描き方にもズレがある
映画ではヨッセイを除いた3人の仲間がやや極端に描かれているように感じました。
とくにカールという謎めいた男が、最初からどこか胡散臭い雰囲気を漂わせていますが、実際にはそこまで敵対的な関係ではなかったようです。
もちろん、旅の途中で不安や不信感が募ったのは事実のようですが、映画のように「トラブルメーカー」として一方的に悪者にされていたわけではないようです。
マーカスに関しても、映画では体力のなさが強調されていましたが、現実にはもっと複雑な事情があったと本人は語っていたようです。
仲間の行動すべてに意味があり、そこには恐怖や疲労が影響していたのだと思います。
映画ではその細やかな背景までは描ききれない部分があったかもしれません。
幻覚の描写はやや演出寄り
映画の中盤以降、ヨッセイが幻覚を見るシーンがいくつか出てきます。
特に、ジャングルの中で突然誰かと話し始めたり、幻想的な光景が目の前に広がったりするあの場面。
視覚的にはかなり幻想的で、美しささえ感じさせる演出になっていました。
でも実際のヨッセイの体験談を読むと、幻覚というよりは「現実との区別がつかなくなる意識の濁り」に近かったようです。
つまり、夢を見ているというよりは、現実がぼやけて何もかもが錯乱していくような、あの感覚。
映像で再現するには限界がある部分かもしれませんが、現実の方がもっと生々しくて、恐怖もリアルだったのではないでしょうか。
救出のタイミングや方法も調整されている
救出されるクライマックスの場面。
映画では劇的な再会が描かれ、まるで奇跡の瞬間に立ち会っているような気分になりますが、実際の状況はもう少し地味というか、現実的な流れだったようです。
助けに来たケヴィンは、川沿いを何度も往復し、地元の住民たちの協力も得ながら、ようやくヨッセイを発見したとのこと。
映画では一発逆転的に描かれていましたが、現実ではもっと時間をかけ、情報を集め、希望が途切れそうな中でようやく辿り着いたというのが本当のところのようです。
救出の直後も、映画ではすぐにヘリコプターなどがやって来るような印象を受けましたが、実際は地元のボートで運ばれ、病院に着くまでにも相当時間がかかったとされています。
そのあたりの「救出後の長いケア期間」は映画ではほとんど描かれていません。
実話と映画、それぞれにリアリティの形がある
全体を通して見ると、映画と実話には細かい違いがいくつかあるものの、大きなストーリーの流れはかなり忠実に再現されています。
ただ、やはり映画である以上、観る人の感情を揺さぶるために多少の演出やデフォルメは避けられなかったのでしょう。
実際のヨッセイは、映画化にあたって脚本や演出にも協力していたとされています。
つまり、本人も納得のうえで「映画として映えるような」工夫が加わっているということです。
それを知ったとき、単なるフィクションではなく「実話ベースの作品として、できる限りの真実を伝えたい」という想いが詰まっているのだなと感じました。
まとめ
『ジャングル ギンズバーグ19日間の軌跡』は、実際にあった出来事をもとに作られた作品で、想像以上にリア実に近いストーリーが展開されています。
ただ、映画ならではの演出も随所に散りばめられていて、現実の過酷さとはまた違った角度から視聴者の心に響くよう構成されていました。
細かな違いはあれど、命をかけたサバイバルと、それを通して描かれる人間の弱さと強さには胸を打たれるものがあります。
映画を観てから実際の体験談に触れると、また違った見え方がしてくるのもこの作品の面白さだと感じました。
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