科学史に名を刻む偉人マリ・キュリー。
放射能の研究を切り開き、ノーベル賞を2度受賞した世界的科学者ですが、その人生は決して栄光だけではありませんでした。
映画「キュリー夫人 天才科学者の愛と情熱」（2019年、イギリス）は、女性研究者としての苦難、夫ピエールとの愛と別れ、そして科学の進歩が人類に与えた光と影を描いた実話に基づくドラマです。
主演はロザムンド・パイク。
マリ・キュリーの激動の人生は、伝記映画という枠を超えて、科学の意味や愛の力について深く問いかけてきます。
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映画「キュリー夫人 天才科学者の愛と情熱」解説
- 原題：Radioactive
- 公開：2019年（イギリス）
- ジャンル：実話・ノンフィクション／伝記ドラマ
- 監督：マルジャン・サトラピ
映画「キュリー夫人 天才科学者の愛と情熱」は、マリ・キュリーの人生を描いた伝記ドラマです。
放射線の研究で世界的に知られる科学者としての姿と、一人の女性として愛や葛藤に揺れる姿が丁寧に描かれています。
物語は、若き日にピエール・キュリーと出会い、研究と人生のパートナーとして歩み出すところから始まります。
二人の結婚生活は幸福に満ちていましたが、同時に過酷な実験や研究の日々が続き、放射線という未知の力と向き合うことになります。
ピエールの突然の事故死は大きな転機となり、深い悲しみの中で研究を続ける決意を固める姿が印象的に描かれます。
その後、女性科学者として偏見や社会の壁に立ち向かいながら、二度のノーベル賞を受賞する偉業を達成していくのです。
この作品は、科学史の中で名を残したキュリー夫人の功績を讃えると同時に、科学の進歩が人々の命を救う一方で、戦争や兵器に利用されていくという皮肉な現実にも目を向けています。
愛する人との絆、失った悲しみ、そして科学への情熱に生きたマリ・キュリーの姿を通じて、その強さと脆さの両面が鮮やかに浮かび上がる作品になっています。
キャスト
- マリ・キュリー：ロザムンド・パイク
- ピエール・キュリー：サム・ライリー
- ポール・ランジュバン：アナイリン・バーナード
- イレーヌ・キュリー：アニャ・テイラー＝ジョイ
- リップマン教授：サイモン・ラッセル・ビール
映画「キュリー夫人 天才科学者の愛と情熱」あらすじ・ネタバレ
1934年、パリ。
病に倒れたマリ・キュリーはストレッチャーで病院へ運ばれていきます。
その道中、研究人生を振り返るように記憶がよみがえります。
1893年、パリのソルボンヌ大学。
ポーランドから渡仏したマリ・スクウォドフスカは研究に情熱を注いでいましたが、女性であることを理由に資金を打ち切られ、研究室からも追い出されてしまいました。
リップマン教授からの冷遇や同僚たちの偏見にさらされ、居場所を失ったマリ。
何度も研究機関を訪ねますが門前払いを受け続けました。
失意の中、化学者ピエール・キュリーと再会。
ピエールはマリの論文に感銘を受けており、共同研究を提案します。
研究資金も実験設備も提供すると申し出ますが、マリは自立を重んじて一度は拒否。
しかし、自宅での実験が失敗に終わり、ついにピエールの協力を受け入れることを決意しました。
結婚と栄光、放射能の発見
やがてマリとピエールは恋に落ち、結婚。研究と生活を共にする伴侶となります。
ピエールは広い研究室を準備し、二人は鉱石を何トンも集め、ひたすら元素の分離実験を繰り返しました。
数年に及ぶ努力の末、未発見の新元素ポロニウムとラジウムを取り出すことに成功。
暗闇で緑色に輝くラジウムは人々の目を奪い、マリはその現象を「放射能」と名付けました。
この業績によってピエールは教授の地位を得、夫妻の名は一躍世界に知られることになります。
二人の間には長女イレーヌ、続いて次女が誕生。
家庭と研究の両方を抱えながら、マリ・キュリーは科学の最前線に立ち続けました。
ノーベル賞と悲劇の死
研究はやがてノーベル賞候補に推されます。
しかし最初に選ばれたのはピエールの名前だけ。
ピエールは当然のように「これは夫婦の共同研究だ」と主張し、最終的に1903年、夫妻は揃ってノーベル物理学賞を受賞しました。
ただ、この栄光が完全な幸福をもたらすことはありませんでした。
ピエールは体調を崩し、放射能の影響とされる不調に苦しみながら、降霊術に傾倒していきます。
科学を信じ抜くマリは理解できず、夫婦の間にすれ違いが生じていきました。
そして1906年。
パリの街中でピエールが馬車に轢かれ、帰らぬ人となります。
あまりに突然の事故死に、マリは打ちひしがれ、罪悪感と絶望に苛まれました。
ラジウムの毒性が夫の命を削ったのではないか、そう考えずにはいられなかったのです。
孤独に耐えきれず、マリは友人ポール・ランジュバンに支えを求め、次第に親密な関係になります。
しかし、この関係は新聞に暴かれ、不倫スキャンダルとして大々的に報じられました。
マリは世間からの嘲笑と嫌がらせにさらされ、研究者としての評価すら揺らぎます。
結末
それでもマリ・キュリーは研究を続け、第1次世界大戦が始まると娘イレーヌと共に移動式レントゲン車を開発。
戦場へ赴き、数えきれない兵士の命や手足を救いました。
2つのノーベル賞のメダルを資金源として提供するなど、科学を人のために役立てる信念は揺らぎませんでした。
晩年には2度目のノーベル賞（化学賞）を受賞。
授賞式では当初冷ややかだった聴衆が次第に大きな拍手を送り、女性科学者としての姿を認めました。
1934年、病で弱ったマリは病院で息を引き取ります。
夢の中では亡きピエールと再会し、「君が世界を変えたんだ」と言葉をかけられ、静かに安らぎの中で逝きました。
その後、娘イレーヌは夫フレデリックと共に人工放射能を発見し、両親と同じくノーベル賞を受賞。
マリ・キュリーの研究は放射線治療としてがん医療の発展に貢献し、同時に原子力や核兵器としての影の部分も生み出しました。
科学の光と影を体現した生涯は、今もなお語り継がれています。
映画「キュリー夫人 天才科学者の愛と情熱」感想
映画「キュリー夫人 天才科学者の愛と情熱」を観て一番心に残ったのは、研究に向き合うキュリー夫人のひたむきさでした。
科学の発見ってどうしても堅苦しく聞こえがちなんですけど、この映画では人間味あふれる部分がたくさん描かれていて、ただの偉人伝にはなっていないんですよね。
ピエールと出会って、お互いに支え合いながら研究に打ち込んでいく姿はとてもあたたかくて、見ている自分まで力をもらえるような気がしました。
でもその幸せが突然途切れてしまうシーンは胸にぐっときて、画面越しに一緒に喪失感を味わったような気分にもなりました。
それでも立ち止まらずに研究を続け、偏見や壁を何度も乗り越えていく姿を見ていると、「強さ」ってただ前に進むことだけじゃなくて、苦しさを抱えながらも諦めないことなんだなと考えさせられました。
あと、科学の発見が人々の命を救う道にも、戦争や兵器にもつながっていく描写はすごく印象的でした。
知識や技術の持つ両面性を突きつけられるようで、単なるサクセスストーリーにしなかったところも深いなと思います。
見終わったあとには、キュリー夫人という人物の偉大さだけじゃなく、一人の人間としての弱さや迷いに触れられた気がして、なんだか親近感もわきました。
科学の話なのに、自分の人生にも重ねて考えたくなるような映画でした。
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まとめ
映画「キュリー夫人 天才科学者の愛と情熱」は、マリ・キュリーの人生を描いた伝記ドラマです。
若きマリ・スクウォドフスカは大学で性差別に直面し、研究の機会を十分に得られませんでしたが、化学者ピエール・キュリーとの出会いによって共同研究を始めます。
二人は結婚し、ポロニウムとラジウムという新元素を発見。
放射能という概念を提唱し、ノーベル賞を受賞するなど科学界に偉業を残しました。
しかし、ピエールの突然の死や放射能の危険性、さらには社会的偏見や不倫スキャンダルなど、幸福だけではない波乱の人生も描かれています。
映画では、科学者としての情熱と人間としての葛藤、愛や悲しみ、そして研究がもたらす光と影が丁寧に描かれています。
偉大な業績の裏にある苦悩や葛藤をリアルに感じられ、科学の発見が人々の命を救う一方で戦争や兵器に利用されるという両面性にも考えさせられる作品でした。
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