「マイ・バッハ 不屈のピアニスト」は、ブラジルを代表する音楽家ジョアン・カルロス・マルティンスの壮絶な半生を描いた2017年の伝記映画です。
生まれつき病弱な体を抱えながらもピアノに出会い、天才的な才能で一躍注目を浴びます。
しかし、度重なる怪我や不運によって演奏家としての道を絶たれかけ、それでも音楽を諦めずに立ち上がり続けた姿は世界中の人々に感動を与えました。
劇中で流れる演奏はすべてジョアン本人によるものという点も大きな魅力となっています。
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映画「マイ・バッハ 不屈のピアニスト」解説
- 公開年：2017年
- 製作国：ブラジル
- 監督：マウロ・リマ
- ジャンル：伝記・音楽・ドラマ
- 特徴：実話を基にしたノンフィクション作品、劇中楽曲はすべて本人演奏
一流の演奏家として世界を飛び回っていたジョアンは、不慮の事故で3本の指に障害を負ってしまう。
厳しいリハビリに励んだ彼は、ピアニストとしての活動を再開し、バッハの全ピアノ曲収録という偉業に挑戦する。
だが、さらなる不幸が彼に襲いかかり…。
キャスト
- アレシャンドリ・ネロ：ジョアン・カルロス・マルティンス
- ダヴィ・カンポロンゴ：ジョアン（少年時代）
- ホドリゴ・パンドルフォ：ジョアン（青年時代）
- カコ・シオークレフ
- フェルナンダ・ノーブリ
- アリンニ・モラエス
映画「マイ・バッハ 不屈のピアニスト」あらすじ・ネタバレ
物語の始まりはサンパウロ。
病弱で体力的にハンディを抱えた少年が、ある日ピアノと出会います。
その瞬間から音楽に心を奪われ、鍵盤の前では弱さを忘れたかのように集中していきました。
驚くほどの吸収力を見せ、わずか8歳で著名な音楽教授の弟子となり、9歳でコンクールに優勝。
周囲を驚かせる早熟の天才として注目されます。
13歳でブラジル国内デビューを果たすと、その後も急速に才能を開花させ、20歳という若さでニューヨーク・カーネギーホールに立ち、観客を圧倒する演奏を披露します。
難解とされる曲にも次々と挑戦し、特にバッハ作品は全曲暗譜できるほどの記憶力を誇り、世界的な天才ピアニストの道を歩み始めます。
不慮の事故
成功と名声に包まれる中で、最初の試練が訪れます。
趣味で行っていたサッカーの練習中に右腕を負傷し、演奏に不可欠な指の動きが制限されてしまったのです。
ピアニスト生命に関わる怪我は、若き音楽家にとって絶望的なものでした。
一度は舞台から離れ、別の職に就くことで現実を受け止めようとしますが、音楽への情熱を捨てることはできません。
リハビリに励み、痛みに耐えながらも再び鍵盤に向かう決意を固めます。
その努力は実を結び、奇跡的な復帰を果たし、ついにはバッハのピアノ曲全曲録音という偉大な挑戦に立ち向かうまでになります。
復帰後の演奏は「魂の音色」と称賛され、観客の心を揺さぶりました。
絶望の淵で
しかし、人生は容赦なく次の苦難を突きつけます。
復活を果たした後、ジョアンは暴漢に襲われ、頭部を負傷。
その影響で脳に損傷が残り、再び右手に麻痺が現れてしまいました。
演奏活動を続けることは困難となり、音楽の道を奪われるという過酷な現実に直面します。
それでも音楽を諦めることはできず、今度は左手だけでピアノを弾く挑戦を始めます。
右手を失ってもなお、観客に音楽を届ける方法を探り続けました。
しかし時が経つにつれて、左手までも自由を失い始めます。
ついに両手が思うように動かなくなり、音楽人生そのものを諦めざるを得ないのではないかという暗闇が迫ります。
これまで幾度も困難を乗り越えてきた精神力も限界に達し、絶望の淵で生きる意味を見失いかけます。
結末
すべてを手放そうとしたとき、支えとなったのは妻の言葉でした。「ピアノが弾けなくても、音楽家であることを捨てる必要はない」。
この一言が新たな希望をもたらします。
ピアニストとしての夢は断たれても、音楽そのものを愛する心はまだ生きていたのです。
その後、指揮者という新たな役割に挑み、舞台に立ちます。
観客の前に姿を現したジョアンは、かつてのように力強い音楽を響かせ、会場を熱狂させます。
大きな拍手に包まれる中で、演奏家としての誇りを取り戻しました。
そして最後のシーン。
指揮を終えた後、ピアノの前に座り、まだ動く指で鍵盤を叩き始めます。
わずかな音でも確かに観客の胸を震わせ、再び「不屈のピアニスト」であることを証明しました。
劇中で響く音色がすべて本人による演奏であると明かされた瞬間、その感動はさらに深まります。
映画「マイ・バッハ 不屈のピアニスト」感想
映画「マイ・バッハ 不屈のピアニスト」を観て、まず強く心に残ったのは「人間の意思の強さはどこまで試されるのだろう」という問いでした。
ジョアン・カルロス・マルティンスの人生は、まるで神に試されているかのように幾度も困難が押し寄せてきます。
病弱な幼少期を出発点に、サッカーでの事故、暴漢による襲撃、そして両手に次々と訪れる障害。
普通なら一度の挫折でさえ心を折られるものですが、それを何度も乗り越えようとする姿には言葉を失いました。
特に印象的だったのは「左手だけでも演奏を続けようとする場面」です。
音楽家にとって演奏がどれほど生命線であるのか、その執念とも呼べる姿が胸を締め付けました。
右手を失っても左手で、そして左手さえ自由を奪われてもなお音楽を諦めない。
その執念深さは単なる職業意識を超えて、生きる理由そのものだったのだと思います。
ただ、観ていて切なさも同時に込み上げてきました。
天才と称えられるほどの才能を持ちながら、その才能を思うように発揮できない現実。
ピアニストとしての全盛期を不運な怪我や事件に何度も遮られ、その度に夢を壊されていく姿を見るのはとても苦しかったです。
それでも、最後には妻の言葉に救われ、新たな道として指揮者を選び直す場面には大きな希望を感じました。
音楽を愛する心さえあれば、演奏家でなくても「音楽家」であり続けられるのだというメッセージは深く胸に響きました。
映画全体を通して、音楽が単なる芸術ではなく、生きるための糧であることが強く伝わってきます。
そして、劇中で流れる演奏がすべてジョアン本人によるものだと知った瞬間、音楽の重みがさらに増しました。
苦難を背負いながらも奏でられる音色は、ただ美しいだけでなく、人間の生き様そのものが刻み込まれているように感じました。
観終わった後に残るのは「どんなに過酷な運命でも、諦めなければ新しい道は開ける」という強いメッセージです。
自分自身の日常に置き換えても、小さな困難で立ち止まることは多いのに、ジョアンの生き方は「まだやれることはある」と背中を押してくれます。
音楽映画としての魅力に加え、一人の人間の人生に触れることで勇気をもらえる作品でした。
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まとめ
映画「マイ・バッハ 不屈のピアニスト」は、音楽を通して人生の意味や希望を問いかけてくれる深い作品でした。
実在のピアニスト、ジョアン・カルロス・マルティンスの半生を描き、困難に立ち向かう強さや、音楽への愛を失わない姿は胸に響きます。
物語はシンプルに見えて、その裏には「逆境をどう生き抜くか」という普遍的なテーマが込められており、観る人の心を揺さぶる力があります。
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「音楽」「人生」「不屈の精神」といったキーワードに心が動く人には必見の作品だと感じました。
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