映画『天才画家ダリ 愛と激情の青春』(原題:Little Ashes)は、2008年に製作されたイギリスとスペインの合作による伝記ドラマです。
20世紀の芸術史に名を残すシュルレアリスムの画家サルバドール・ダリと、スペインが誇る詩人フェデリコ・ガルシーア・ロルカの間に生まれた、友情とも愛情ともつかぬ関係を繊細に描いた作品です。
“天才”として生きる苦しみ、芸術に魂を捧げる情熱、そして禁断の愛の痛みが静かに胸を打ちます。
主演は『トワイライト』シリーズで知られるロバート・パティンソン。
若き日のダリを挑発的かつ繊細に演じています。
監督は『ソロモンとガイナー』のポール・モリソン。
映画「天才画家ダリ 愛と激情の青春」解説

物語の舞台は1920年代のスペイン。
マドリード王立美術学校で出会った三人の若き芸術家――画家サルバドール・ダリ、詩人フェデリコ・ガルシーア・ロルカ、そして映画監督を志すルイス・ブニュエル。
当時のスペインは王政と独裁政治の影響下にあり、自由な芸術や思想が抑圧される時代でした。
そんな中、彼らは芸術と情熱を武器に自分の感性を表現しようともがきます。
映画は、ダリとロルカの間に芽生える特別な絆、そしてやがて訪れる決別と悲劇を、美しくも切ない映像で描いています。
実際の歴史に基づいた物語でありながら、芸術家たちの青春をロマンティックかつ痛烈に映し出す本作は、LGBTテーマの要素を持ちながらも、単なる恋愛ではなく「芸術とは何か」を問いかける人間ドラマです。
キャスト
- サルバドール・ダリ:ロバート・パティンソン
- フェデリコ・ガルシーア・ロルカ:ハビエル・ベルトラン
- ルイス・ブニュエル:マシュー・マクナルティ
- マグダレナ:マリーナ・ガテル
- 監督:ポール・モリソン
- 脚本:フィリップ・アッカーマン
映画「天才画家ダリ 愛と激情の青春」あらすじ・ネタバレ
1922年、スペイン・マドリードのサン・フェルナンド王立美術学校。
画家志望の青年サルバドール・ダリは、周囲から変わり者として注目を集めていました。
奇抜な服装、独特な発想、そして何より自分の才能への確信。
そんなダリが出会ったのが、詩人フェデリコ・ガルシーア・ロルカと、映画を志すルイス・ブニュエルです。
感性豊かな三人はすぐに意気投合し、芸術や思想を語り合いながら友情を深めていきます。
しかしその中で、ロルカは次第にダリに強い想いを抱くようになります。
ロルカは同性愛者であり、その感情を隠しながらもダリへの憧れを抑えきれなくなっていきました。
ある晩、ロルカが叔母の家で行われたパーティーで、軍人たちの前で反体制的な詩を朗読する場面がありました。
恐れずに真実を語るロルカの姿に、ダリは心を揺さぶられます。
二人の間には、友情を超えた特別な空気が生まれていました。
愛と芸術の狭間で揺れる二人
夏の休暇、ダリとロルカは地中海沿いのカダケスにある廃墟で共に過ごします。
静かな海辺、沈む夕日、そして二人だけの時間。
やがて唇を重ねたその瞬間、友情は愛情へと姿を変えました。
ロルカの愛は日に日に激しくなり、身体の関係を求めるまでに至ります。
しかし、ダリはロルカの愛を受け止めきれず、恐怖と戸惑いに襲われます。
芸術のために心を開いた相手を、同時に拒絶してしまう矛盾。
その葛藤はダリを苦しめました。
一方、二人の親密さに不満を感じたブニュエルは、フランスへと旅立つ決意をします。
その後、ダリもロルカの愛の重さに耐えきれず、逃げるようにパリへ向かいました。
残されたロルカは深い孤独に沈み、自堕落な生活へと落ちていきます。
しばらくしてダリが再びマドリードに戻ってきますが、以前とはまるで別人のようになっていました。
パリで出会った人妻ガラの話ばかりを語り、ロルカを突き放します。
怒りと絶望に駆られたロルカは、ダリの前でマグダレナと関係を持ちます。
二人の絆は、その夜を境に完全に崩れ去ってしまいました。
それぞれの道、すれ違う運命
1928年、ダリとブニュエルは共同で短編映画『アンダルシアの犬』を製作し、前衛的な映像で大きな注目を集めます。
一方、取り残されたロルカは孤独を深め、詩と演劇の世界に逃げ込みます。
マグダレナの励ましを受け、劇団を立ち上げて全国を巡るようになります。
次第に政治への関心を強め、反ファシズムを訴える活動にも身を投じていきます。芸
術と社会の間で闘う姿は、かつての繊細な青年とは違い、強く燃える革命家のようでした。
1936年、スペイン内戦の影が迫る中、ダリからの手紙が届きます。
久しぶりの再会。
そこにいたダリは、奇抜なヒゲと衣装をまとった“奇人”と呼ばれる芸術家へと変貌していました。
ダリは妻ガラを伴い、アメリカへの同行をロルカに提案します。
しかし、ロルカはかつての純粋な友を失ったような虚しさを感じ、申し出を拒みます。
そのままスペインに留まったロルカは、反乱軍の台頭により命の危険が迫っていきました。
芸術と愛が遺したもの
1936年、スペイン内戦が勃発。
ロルカは故郷グラナダへ戻りますが、反乱軍によって拘束され、そのまま銃殺されます。
遺体は発見されず、今も“スペイン文学最大の悲劇”として語り継がれています。
アメリカへ渡っていたダリは、ラジオからロルカの死を知ります。
言葉を失い、絶望に沈みながらも、再び“奇抜な仮面”を被り、表向きのダリとして振る舞う姿が描かれます。
芸術の天才として世界に名を刻んだサルバドール・ダリ。
しかし、その心の奥には、ロルカへの想いと痛みが生涯消えることはありませんでした。
映画のラストで、ダリは黒いマントをまとい、ゆっくりと部屋を出ていきます。
その瞳に宿るのは狂気か、それとも永遠に失われた愛の残像なのか――観る者に静かに問いかけるエンディングです。
映画「天才画家ダリ 愛と激情の青春」感想
映画『天才画家ダリ 愛と激情の青春』を観たとき、最初に感じたのは「静かに燃えている映画だな」ということでした。
派手な演出やドラマチックな音楽よりも、空気の張り詰めたような緊張感と、登場人物たちの繊細な感情のぶつかり合いが印象に残ります。特に、ロバート・パティンソンが演じた若き日のサルバドール・ダリは、才能と孤独、憧れと恐怖の狭間で揺れていて、人間的な弱さがものすごくリアルでした。
ロルカとの関係も、ただの恋愛ではなく「魂のぶつかり合い」に見えました。
芸術家として刺激し合いながらも、どこかで相手を恐れている。ロルカは感情のままに愛をぶつけ、ダリはその強さに戸惑う。あの微妙な距離感、言葉にできない息苦しさが観ている側にも伝わってきて、思わず息を飲みました。
一番心に残ったのは、夏の海辺で二人が過ごすシーンです。静かな風の音と光のコントラストの中に、どこか“永遠に続かない関係”の儚さが漂っていました。
ダリがロルカの愛を受け止めきれない理由もわかる気がします。天才であればあるほど、他人に触れられることを怖がる。理解されたいのに、完全に理解されるのが怖い。そんな矛盾が痛いほど伝わってきました。
後半でロルカが銃殺される展開は、本当に胸が苦しくなりました。
芸術と愛の間でもがいた二人の結末としてあまりにも残酷ですが、だからこそ印象に残ります。
そして、ロルカの死を知ったあとのダリの表情――あれは悲しみとも、後悔とも違う、もっと複雑な感情に見えました。仮面をかぶったまま生き続ける天才の孤独。その背中に、どうしようもない虚しさが漂っていました。
観終わったあと、すぐには感想が言葉にならなかったです。
「愛とは何か」「芸術とは何か」という大きなテーマが、静かに自分の中に残っていく映画でした。
派手な感動よりも、心の奥をじわじわと侵食してくるようなタイプの作品です。
この映画を観て、サルバドール・ダリという人物の“奇抜さ”の裏にある不安や孤独を初めて理解できた気がします。
芸術の世界で生きる人の「痛み」を、こんなに丁寧に描いた映画は珍しいと思いました。
静かで繊細で、観る人の感情をゆっくり揺らしてくる――そんな余韻の残る一作です。
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まとめ
『天才画家ダリ 愛と激情の青春』は、ただの芸術家の伝記ではありません。
芸術の原点にある“情熱”と“孤独”、そして“愛の不完全さ”を描いた作品です。
ダリの奇抜さの裏にある繊細な心、ロルカの言葉に宿る痛み。二人が出会わなければ、あの時代の芸術は違う形になっていたかもしれません。
青春の衝動、芸術への執念、そして愛の行方――。
この映画は、芸術と人間の境界を見つめ直すきっかけを与えてくれる、静かで美しい一作です。

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