2013年に公開された映画『凶悪』は、実話をもとに描かれた衝撃的なクライム・サスペンス作品です。
人間の本性と倫理観が揺さぶられるストーリーは、観る者に深い余韻を残します。
主演の山田孝之さんをはじめ、リリー・フランキーさんやピエール瀧さんら実力派が集結し、善と悪の境界線が崩れていく様をリアルに描き出しています。
映画「凶悪」解説
この作品は、ノンフィクション雑誌記事を原作にしています。
表に出てこなかった連続殺人事件を記者が暴いていくという構成は、事実を下敷きにしているからこそ、リアルで生々しい描写に満ちていました。
監督は『孤狼の血』『死刑にいたる病』などで知られる白石和彌監督。
暴力の空気感と人間の闇を描く手腕はここでも冴えわたっています。
キャストと登場人物
- 藤井修一（山田孝之）：雑誌記者。死刑囚・須藤から届いた手紙をきっかけに、“先生”と呼ばれる男の凶行を追う。
- 須藤純次（ピエール瀧）：死刑囚。自らの余罪と“先生”の犯罪を暴露しようとする。
- 木村孝雄（リリー・フランキー）：須藤が「先生」と呼ぶ男。不動産ブローカーでありながら、冷酷な殺人を繰り返していた。
- 藤井洋子（池脇千鶴）：修一の妻。認知症の姑を介護する中で、夫の暴走に不満を募らせていく。
映画「凶悪」あらすじ・ネタバレ
雑誌「明朝24」の記者・藤井修一（山田孝之）のもとに、ある死刑囚・須藤純次（ピエール瀧）から手紙が届きます。
藤井は、上司からその手紙を“押し付けられる”形で須藤と面会することになりますが、そこで須藤はこう語りはじめます。
「自分以外にも、もっと悪いやつがいる。“先生”っていう男が全部の首謀者だ」と。
須藤が語るのは、7年前に起きた3件の殺人事件。
いずれも保険金を目的としたもので、事故や自殺に見せかけたものばかりでした。
しかし、須藤は被害者の名前さえ曖昧にしか覚えていません。
家では、認知症の母を献身的に介護している妻・洋子（池脇千鶴）がいますが、藤井は仕事にのめり込み、家庭を顧みません。
上司からは「記事にはできない」と止められますが、藤井は独断で取材を続行。
調査の結果、“先生”と呼ばれる木村孝雄（リリー・フランキー）の存在が浮かび上がってきます。
悪意の連鎖
須藤の元恋人から話を聞いた藤井は、第二の被害者・牛場という老人の存在を突き止めます。
木村と須藤は、借金を抱えた牛場の家族から「事故死に見せかけて殺してほしい」と依頼されていたのです。
実際、牛場は無理やり酒を飲まされて命を奪われていました。
その家族に取材をしても、「事故死だ」と言い張るばかりで、保険金も手にしている様子でした。
木村の事務所を突き止めるも、既に廃墟のようになっており、証拠は残されていません。
須藤はかつて、建設業者・森田の焼却炉を使い、島神という老人の死体を処理した過去も語ります。
島神の土地を転売して金を得るため、生き埋めにされた島神——殺害の首謀者はやはり木村でした。
木村は、表向きは娘と妻を持つ普通の不動産ブローカー。しかし裏では、殺人をゲームのように楽しむ冷酷な人間でした。
暴力でねじ伏せられる世界
物語はさらに暗黒の領域へと進みます。
須藤の友人だったヤクザの佐々木が登場します。
出所したばかりの佐々木は「組長に裏切られた」と泣きつきますが、実際に裏切っていたのは佐々木自身でした。
それを知った須藤は、怒りに任せて佐々木を殺害します。
その後、木村と須藤は五十嵐・日野という手下たちとともに次なる凶行を重ねていきます。
日野の恋人を目の前で殺し、部屋ごと燃やす。
須藤と五十嵐は指名手配犯となり、木村は須藤を言葉巧みに操って、五十嵐をも殺させます。
こうして須藤は逮捕され、完全に“使い捨て”にされました。
藤井は、取材結果を上司に提出し、ついに記事が世に出されます。
しかし警察は動かず、自らの執念で木村を追い続ける藤井は、やがて警察に拘束されてしまいます。
釈放後、ようやく警察が木村を逮捕。
牛場殺害の容疑でのことでした。
悪は裁かれたのか、正義は報われたのか
木村の裁判がはじまります。
そこに、証人として須藤が出廷します。
須藤は、「死刑を先延ばしにするため、記者の藤井を利用した」と発言し、藤井を裏切ります。
怒りに震える藤井も証言台に立ちますが、須藤の「生きることに喜びを感じている」という言葉に逆上し、感情をむき出しにします。
最終的に、須藤には死刑に加えて懲役20年の刑が追加され、木村は無期懲役となります。
家庭では、洋子から離婚を突きつけられます。
藤井は、ようやく妻の苦しみと向き合うことになります。
母は施設に入所し、藤井の家庭は崩壊寸前でした。
その後、ようやく木村が面会に応じます。
藤井は、「事件を追い続ける」と宣言します。
木村は、藤井の執念深さに笑いながらこう言います。
「一番、俺を殺したがってるのはあんたなんじゃないのか？」
その言葉を残して、面会は終了します。
映画「凶悪」感想
映画『凶悪』を観たあと、しばらく無言になりました。映画『凶悪』って、タイトル通り確かに“凶悪”なんだけど、ただのバイオレンス映画とかスリラーとはちょっと違うんですよね。もっとこう、人間のイヤ〜なところとか、ずるさとか、欲とか、そういうのがジワジワきて、胃のあたりがずっと重かったです。
一番こたえたのは、やっぱり木村っていう男の存在。リリー・フランキーがあんな役やってるの、最初は信じられなかったけど、終盤にはもう完全に“木村”としてしか見えなくなってました。あんなに静かで、淡々としてて、でも内側が腐りきってるっていうのが本当に怖い。怒鳴ったり暴れたりする悪人よりよっぽど恐ろしいです。
須藤も須藤で、ピエール瀧の演技がリアルすぎてゾッとしました。自分がやったことを語りながら、ちょっと得意げだったり、ヘラヘラしてたり、でもたまに「俺も被害者だ」みたいな顔をするのがすごくイヤで……でも、それがまた本物っぽかったんですよね。人ってここまで堕ちるのかって。
そして記者の藤井も最初はただの正義感かと思いきや、だんだん取材にのめり込みすぎて、感情も倫理観もグチャグチャになってくるんですよね。途中で「この人、木村と地続きなんじゃないの…？」みたいな恐怖を感じたりして。誰が“正義”なのか、最後までわからない感覚がずっと残ります。
この映画、観てスッキリするとか、感動するとか、そういうのはまったくないです。でも「観てよかった」って思える作品でした。気軽に人におすすめはできないけど、たとえば「人間の闇」って言葉にピンとくる人には刺さると思います。
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映画『凶悪』は実話ベースの衝撃作。重たい内容ではありますが、役者陣の鬼気迫る演技は一見の価値ありです。
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まとめ
映画『凶悪』は、実際に起きた事件をもとにした衝撃のノンフィクションです。
人間の奥底に潜む悪意や狂気、そしてそれを暴こうとする記者の葛藤がリアルに描かれ、観終わった後もしばらく余韻が残ります。
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