映画音楽って、気づいたら心を持っていかれていることがあります。
映像を見ているはずなのに、いつの間にか音が記憶に残っていて、あとからメロディーだけがよみがえる。
そんな体験をしたことがある人も多いと思います。
映画「モリコーネ 映画が恋した音楽家」は、その“映画に愛された音楽家”エンニオ・モリコーネの人生を、証言と映像でじっくり掘り下げていくドキュメンタリーです。
「ニュー・シネマ・パラダイス」で知られるジュゼッペ・トルナトーレ監督が、モリコーネ本人の晩年の姿を中心に、映画音楽がまだ軽く見られていた時代から世界的な評価を得るまでを描いていきます。
この記事では、映画「モリコーネ 映画が恋した音楽家」の内容をネタバレありでまとめています。
結末まで触れていますので、未鑑賞の方はここから先は注意してください。
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映画「モリコーネ 映画が恋した音楽家」解説



この作品は2021年のイタリア映画で、エンニオ・モリコーネ(1928-2020)の功績を称えるドキュメンタリーです。
監督を務めたのは、ジュゼッペ・トルナトーレ。モリコーネと「ニュー・シネマ・パラダイス」などで組んだことでも知られる映画監督です。
映画の面白いところは、単に「偉大な作曲家の伝記」として語るだけではなく、映画音楽というジャンルそのものの立ち位置まで掘り下げている点です。
かつて映画音楽は、芸術として認められにくい空気がありました。
音楽家の世界でも「映画音楽は本物じゃない」と見られていた時代が確かにあったんですよね。
そんな中でモリコーネは、映画のために音を作り続けました。
オーケストラだけではなく、ノイズや異質な音、予想外の楽器の使い方まで取り込みながら、映画音楽の表現を押し広げていった存在です。
本作ではモリコーネ本人の証言に加え、映画人や音楽家たちの言葉が積み重なっていきます。
クエンティン・タランティーノ、クリント・イーストウッド、ベルナルド・ベルトルッチ、ハンス・ジマー、ジョン・ウィリアムズなど、名前だけで圧が強いメンバーが出てくるのもすごいです。
キャスト・出演者
ドキュメンタリー作品なので、いわゆる“キャスト”というより、登場する証言者・関係者が重要になります。
映画「モリコーネ 映画が恋した音楽家」に登場する主な人物は以下の通りです。
- エンニオ・モリコーネ
- ジュゼッペ・トルナトーレ
- セルジオ・レオーネ
- クリント・イーストウッド
- クエンティン・タランティーノ
- ベルナルド・ベルトルッチ
- ハンス・ジマー
- ジョン・ウィリアムズ
- ブルース・スプリングスティーン
- ウォン・カーウァイ
- オリヴァー・ストーン
- ロベルト・カッジャーノ
- ゴッフレード・ペトラッシ
この作品は「モリコーネを褒める映画」ではあるんですが、単なる礼賛で終わりません。
むしろ「モリコーネは変人だった」と言われるくらい、クセの強い部分も含めて描かれていきます。
その人間臭さがあるからこそ、音楽の凄みが余計に刺さるんですよね。
映画「モリコーネ 映画が恋した音楽家」あらすじ・ネタバレ
エンニオ・モリコーネはイタリアに生まれ、後に数多くの映画音楽を手がけることになる作曲家です。
周囲からは「かなりの変人」と言われることもあり、型にはまることを嫌う人物として語られていきます。
モリコーネの作曲スタイルも独特でした。
楽器が並んだスタジオで試行錯誤するのではなく、楽器すらない書斎で頭の中に浮かんだ音を五線譜に落とし込んでいく。
この話だけで、もう職人の域だな…と思ってしまいます。
ただ、最初から音楽が好きで突き進んだわけではありません。
若い頃のモリコーネは医者になりたかったのですが、トランペット奏者だった父親からトランペットを吹くよう命じられます。
ここが、人生の最初の分岐点です。
自分の希望とは別の方向へ進むことになったモリコーネですが、結果的にこの流れが世界を変えてしまうんだから、人生ってわからないです。
音楽の道に入ったモリコーネは、最初は生活のための音楽活動を苦痛に感じていました。
でも、教師ロベルト・カッジャーノに才能を見出されたことで状況が変わっていきます。
カッジャーノはモリコーネに作曲を学ぶよう勧め、モリコーネは作曲家ゴッフレード・ペトラッシと出会います。
ペトラッシは後に師匠となる存在で、モリコーネの音楽人生の軸を作った人物でもあります。
モリコーネは音楽院で正統派の作曲技法を学びつつ、そこに前衛的な手法を混ぜ込んでいきます。
楽器を通常とは違う鳴らし方で使う。
タイプライターやバスタブの音まで取り込む。
このあたりの話は、映画音楽を“背景”としてではなく“表現”として扱っていたことがよくわかります。
音楽院卒業後、モリコーネはマリア夫人と結婚します。
そして、ただひたすら曲を書き続け、編曲の仕事もこなしながら、少しずつ注目を集めていきます。
静かに積み上げて、気づいたら大きな存在になっていた。
この感じが、モリコーネらしい始まり方でした。
映画音楽へ進むが、音楽界では孤立していく
モリコーネはメジャーレーベルのRCAレコードと契約し、著名なミュージシャンやアーティストとコラボレーションするようになります。
ここから一気に世界が広がっていくんですよね。
そしてモリコーネは、映画音楽の世界へ足を踏み入れます。
ただ、この時代の映画音楽は、芸術的地位が高いとは言えませんでした。
皮肉なのは、師匠ペトラッシも映画音楽を手がけていたのに、映画音楽を「本物の音楽」とは認めていなかったことです。
弟子たちも同じ考えで、結果としてモリコーネは孤立していきます。
映画音楽を作ることは、音楽家として格が下がる。
そんな空気があった時代に、モリコーネはその場所で勝負し続けたわけです。
ここでモリコーネにとって大きな支えとなったのが、セルジオ・レオーネでした。
小学校時代からの同級生であり、生涯の盟友となる映画監督です。
レオーネはマカロニ・ウエスタンの巨匠として知られ、モリコーネの音楽を聴いて起用を決めます。
そしてモリコーネは「荒野の用心棒」「夕陽のガンマン」「続・夕陽のガンマン」など、レオーネ作品の音楽を数多く手がけていきます。
クリント・イーストウッドも、モリコーネの音楽について賛辞を送っています。
モリコーネの音楽は、映像を引き立てるだけでなく、人物の存在感そのものを増幅させていたということなんでしょう。
さらに印象的なのが、モリコーネが音楽を作ったあと、最初に聴かせる相手はマリア夫人だったという話です。
マリア夫人が気に入らなければ、監督に聴かせずお蔵入りにする。
この徹底ぶりが、ちょっと怖いくらい本気です。
モリコーネは歌声やサウンドだけでなく、ノイズ、トーン、ムードなどあらゆる要素を織り交ぜながら評価を高めていきます。
1969年だけでも21本の映画音楽に携わるなど、仕事は絶好調でした。
ここまで読むと、完全に勝ち組の流れです。
でも、人生ってそう簡単に一直線ではないんですよね。
マンネリ批判と、自分の音楽を守る戦い
クエンティン・タランティーノやブルース・スプリングスティーンなど、多くの映画人・音楽人を魅了し続けてきたモリコーネ。
しかし、順調に見えたモリコーネも次第にマンネリに陥っていきます。
「作った音楽はどれも同じ曲だ」
そう言われるようになっていきます。
これって、才能がある人ほど言われるやつですよね。
当たってるようで当たってない。
でも言われた側は、たぶん一番刺さる。
モリコーネは反論します。
「印象は似ているが、不協和音で不安定な場面が続くからそう感じるのかもしれない」
ただ周囲は、それを言い訳と受け取ったのかもしれません。
このままだと仕事がなくなると警鐘を鳴らします。
モリコーネはスタイルを変える必要に迫られます。
そして映画「アロンサンファン/気高い兄弟」のエピソードが出てきます。
ラストで踊りの曲が必要だと言われ、伴奏曲を書き下ろしたモリコーネ。
しかし編集が進まないため、製作者側は複数の音楽家の異なる音を仮につけていました。
これを知ったモリコーネは激怒します。
自分の曲の意味がなくなるからです。
一度は映画から降りようとも考えますが、最終的に「劇中音楽は全て自分が作曲する」ことを条件に残ることにしました。
ここ、めちゃくちゃモリコーネらしいです。
妥協できないんですよね。
真似をすることも、誰かの音に寄せることも嫌う。
映画音楽家たちは「モリコーネがいなかったら、今の映画音楽は全く違ったものになっていた」と語ります。
モリコーネは映画音楽に変革を与え、交響曲からポップスまでを融合し、ジャンルの垣根を取り払いました。
映画音楽が“芸術じゃない”と言われていた時代に、映画音楽を芸術の側に引き上げた存在。
この評価は誇張じゃないと思います。
最後まで現役だったモリコーネ
音楽業界ではモリコーネの名は広く知られていました。
でも一般層には、まだ興味すら持たれていませんでした。
その流れを変えたのが、セルジオ・レオーネの映画「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」の音楽です。
タランティーノにも大きな影響を与えた作品であり、モリコーネの音楽がより広い層に届くきっかけになっていきます。
モリコーネは幾度もアカデミー賞にノミネートされながら、なかなか受賞できませんでした。
受賞確実と言われても取れない。
このあたりの悔しさは、想像するだけで重いです。
モリコーネは一度、映画音楽から距離を置き、室内楽にシフトしようとします。
でもそれでも、モリコーネの音楽を求める映画人は後を絶ちませんでした。
そして本作の監督ジュゼッペ・トルナトーレから「ニュー・シネマ・パラダイス」のオファーを受けます。
モリコーネは一度断るのですが、最終的に思い直して受諾します。
この流れがまた良いんですよね。
拒否して終わりじゃなく、ちゃんと戻ってくる。
ここにモリコーネの“映画への愛”も見える気がします。
2006年、モリコーネはアカデミー賞名誉賞を受賞します。
ようやく世界の巨匠として認められた瞬間です。
そしてモリコーネは、クエンティン・タランティーノ監督の映画「ヘイトフル・エイト」でアカデミー作曲賞を受賞します。
長い時間をかけて、ようやく手にした評価でした。
モリコーネは2020年に91歳で亡くなるまで、生涯現役で作曲活動を続けました。
この作品は、その人生の最後までを丁寧に見届けるようなドキュメンタリーとして終わっていきます。
映画「モリコーネ 映画が恋した音楽家」感想
映画「モリコーネ 映画が恋した音楽家」を観たあと、しばらく音が残りました。
映像の余韻というより、耳の奥にメロディーが居座ってる感じです。こういう映画って、意外と少ない気がします。
正直、観る前は「偉大な作曲家のドキュメンタリーだよね」くらいのテンションでした。
もちろん興味はあるけど、内容が渋そうだなって思っていたんです。
でも実際は、渋いどころかめちゃくちゃ熱い作品でした。
モリコーネの人生って、派手に成功していく物語じゃなくて、ずっと積み上げて、ずっと戦ってるんですよね。
周りに理解されなくても、自分の音を信じて書き続ける。
その姿が、想像してた以上に人間くさくて、そこが刺さりました。
特に印象に残ったのが、モリコーネが「変人」って言われていたところです。
この言葉って、悪口にも聞こえるけど、裏を返せば「普通じゃないほどこだわりがある」ってことだと思うんです。
音を妥協しない。真似をしない。自分で考える。
その頑固さが、そのまま作品の強さになってるんだなって感じました。
あと、モリコーネが作った曲を奥さんに最初に聴かせて、気に入らなかったらお蔵入りにする話。
ここ、なんか妙にリアルで好きでした。
天才ってもっと孤独に作ってるイメージがあったけど、ちゃんと身近な人の感覚を大事にしてたんだなって思ったんです。
ただの職人じゃなくて、ちゃんと“誰かに届く音”を作ってたんだなって。
それと、この映画を観て一番変わったのは、映画音楽の見え方です。
今まで映画を観てて「この曲いいな」とは思ってたけど、どこか背景として流してた部分もありました。
でもモリコーネの話を聞くと、映画音楽って背景じゃなくて、映画そのものの心臓なんですよね。
音がないと成立しないシーンって、確かにあります。
タランティーノとかイーストウッドとか、名だたる人たちがモリコーネを語る場面も良かったです。
「すごい音楽家だ」って言葉が並ぶんだけど、ただ褒めてるだけじゃなくて、みんな本気で影響を受けた顔をしてる。
その空気感が伝わってきて、観てる自分まで背筋が伸びました。
それでもモリコーネは、ずっと評価され続けたわけじゃない。
アカデミー賞に何度もノミネートされても取れなかった時期があって、悔しさもちゃんと残ってる。
この「報われない時間」が描かれてるのが、逆に良かったです。
成功のドキュメンタリーって、たまに綺麗にまとめすぎるけど、この映画はそこを逃げないんですよね。
観終わったあと、私はちょっとだけ思いました。
「結局、最後に残るのって、才能より執念なのかもしれない」って。
もちろんモリコーネは天才なんですけど、それ以上に“書き続けた人”なんですよね。
飽きられても、同じだと言われても、自分の音を守り続けた。
この映画は、音楽好きのためだけの作品じゃないと思います。
何かを作ってる人、続けてる人、途中で折れそうな人に刺さる作品です。
私は観てよかったです。
静かに背中を押される感じがありました。
映画「モリコーネ 映画が恋した音楽家」無料視聴の方法
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まとめ
映画「モリコーネ 映画が恋した音楽家」は、映画音楽の常識を変えた作曲家エンニオ・モリコーネの人生と功績を、本人の言葉と豪華な証言者たちの視点から丁寧にたどるドキュメンタリーです。
「荒野の用心棒」や「ニュー・シネマ・パラダイス」などの名曲が生まれた背景がわかるだけでなく、映画音楽が軽く見られていた時代に挑み続けたモリコーネの覚悟も描かれていました。
ネタバレありで観ると、モリコーネが評価されるまでの長い時間や、最後まで現役を貫いた姿がより胸に残ります。
映画好きはもちろん、何かを続けている人にも刺さる作品なので、気になったらぜひ一度観てみてください。
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