2019年公開の映画「赤い闇 スターリンの冷たい大地で」は、1930年代に実在した英国人ジャーナリスト、ガレス・ジョーンズの目を通して描かれる衝撃の歴史ドラマです。
監督はポーランド出身のアグニエシュカ・ホランド。
ナチス台頭や世界恐慌のさなか、唯一繁栄していると見られていたソ連へと単身乗り込み、ジョーンズが直面したのは“飢餓で数百万人が命を落とすウクライナの惨状”でした。
世界が見て見ぬふりをする中、真実を伝えようとした若き記者の苦闘を描いた作品です。
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映画「赤い闇 スターリンの冷たい大地で」解説
- 公開：2019年
- 制作国：ポーランド、イギリス、ウクライナ
- 監督：アグニエシュカ・ホランド
- ジャンル：伝記映画、歴史ドラマ
- テーマ：実話・ノンフィクション、言論の自由、ジャーナリズム、スターリン体制下の人為的飢饉（ホロドモール）
映画「赤い闇 スターリンの冷たい大地で」は、2019年に公開された作品で、ポーランド、イギリス、ウクライナの共同制作によって生まれました。
監督を務めたのはアグニエシュカ・ホランドで、歴史を題材にした伝記映画でありながら、重厚な人間ドラマとしても描かれています。
物語の中心にあるのは、スターリン体制下で起きた人為的な飢饉、いわゆるホロドモールという歴史の暗部です。
本作は、若き英国人ジャーナリスト、ガレス・ジョーンズの目を通じて、ソ連が「繁栄」と喧伝する裏側に隠された惨状を浮き彫りにしていきます。
表現の自由やジャーナリズムの使命、権力に抗うことの困難さがリアルに描かれ、単なる歴史映画にとどまらず現代にも通じる普遍的なテーマを投げかけています。
キャスト
- ジェームズ・ノートン：ガレス・ジョーンズ（英国人ジャーナリスト）
- バネッサ・カービー：エイダ・ブルックス（ニューヨークタイムズ記者）
- ピーター・サース：ウォルター・デュランティ（NYタイムズ支局長）
- ジョゼフ・マウル：ジョージ・オーウェル／エリック・ブレア（作家）
- ケネス・クラナム：デビッド・ロイド・ジョージ（元首相）
- マルチン・チャルニク：ポール・クレブ（記者仲間）
- マシュー・マーシュ：ウィリアム・ランドルフ・ハースト（新聞王）
- そのほか、ソ連当局者やウクライナの人々を演じる実力派俳優が多数出演
映画「赤い闇 スターリンの冷たい大地で」あらすじ・ネタバレ
1933年、世界恐慌のさなか。
イギリスの若き記者ガレス・ジョーンズは、かつてロイド・ジョージ元首相の外交顧問を務め、ナチスのヒトラーへの取材も成功させた有望な人物でした。
そんな彼が疑問を抱いたのは、経済危機に沈む世界の中で唯一繁栄しているように見えるソ連。
なぜスターリン体制だけが成長を続けているのか。その真実を知るため、彼は職を失いながらも単身でモスクワに向かいます。
到着後、かつての知人である記者ポールに連絡を取ろうとしますが、電話の最中に不自然に切断され、後に死亡したと知らされます。
ニューヨーク・タイムズの支局長デュランティは「強盗に襲われた」と説明しますが、ジョーンズは不信感を募らせました。
モスクワでの監視とエイダとの出会い
モスクワ滞在中、ジョーンズの行動は当局により厳しく制限され、外出は許されず、監視の目が常につきまといました。
記者の集まりに招かれたジョーンズは、ジャーナリストたちが酒や麻薬に溺れ、体制に迎合する姿を目にし失望します。
その帰り道、女性記者エイダ・ブルックスと出会い、密かに残した記事を読み、その誠実さに心を打たれます。
ジョーンズは彼女の自宅を訪ね、ポールが「ウクライナに行こうとしていた」ことを知ります。
エイダは危険だと止めますが、ガレス・ジョーンズは決意を固め、監視をかいくぐってウクライナ行きの列車に飛び乗りました。
ウクライナで見た飢餓の現実
列車の中では、貧困に苦しむ人々がぎゅうぎゅうに詰め込まれ、わずかな食べ物を奪い合う光景が広がっていました。
ジョーンズは車両を移動してなんとか当局の追跡を逃れ、ウクライナの大地に降り立ちます。
そこで彼が目にしたのは、雪原に放置された死体の山。
街には職を求める人々が列をなし、誰も言葉を発しません。
やがてジョーンズは当局に追われ、村へと逃げ込みます。
そこで出会った少女から肉を分け与えられますが、それが兄の死体から切り取ったものだと知り、言葉を失いました。
飢えに耐えきれず、家族の肉を口にするしかないほど悲惨な状況に、深い衝撃を受けます。
真実を伝えるか、沈黙するかの葛藤
モスクワに連れ戻されたジョーンズは、英国人技師らとともに当局に拘束されます。
ソ連側は「ウクライナの飢饉を書けば技師たちの命は保証しない」と脅迫。
現れたデュランティは「ここで生き残るには真実を捨てるしかない」と冷たく言い放ちます。
帰国後、記事を書くべきか悩むジョーンズは、作家エリック・ブレア（のちのジョージ・オーウェル）を訪ねます。
ブレアは「真実は伝えるためにある」と助言し、ジョーンズは自らの使命を再確認。
ウクライナで見た悲惨な光景を克明に綴り上げました。
孤立するも、記事は世に出る
しかし、政治的な思惑から英国政府もメディアも彼を批判し、ニューヨーク・タイムズまでもが「飢饉はなかった」とソ連寄りの記事を掲載。
ジョーンズは嘘つきと非難され、地元でも変人扱いされて孤立します。
それでも諦めなかった彼は新聞王ウィリアム・ランドルフ・ハーストに直談判。
最初は相手にされませんでしたが、その情熱に打たれ、ハーストは記事を掲載することを決意します。
ついに「ウクライナに広がる死」と題された記事が発表され、真実は世界に届けられました。
ジョーンズは大きな代償を払いつつも、歴史に残る証言者となったのです。
映画「赤い闇 スターリンの冷たい大地で」感想
映画「赤い闇 スターリンの冷たい大地で」を観終わったあと、正直しばらく言葉が出ませんでした。
ヨーロッパの歴史の授業でホロドモールという言葉を聞いたことはあっても、映像として突きつけられるとこんなに心がざわつくのかと驚きました。
ガレス・ジョーンズが最初にモスクワへ行ったとき、周りが華やかで、ソ連の経済成長が持ち上げられている感じに「本当にそうなのかな？」と疑問を抱く場面があります。
私もニュースや情報って、表に出ているものがすべてじゃないんだなと改めて考えさせられました。
特に衝撃だったのは、ガレス・ジョーンズがウクライナの村で餓死者を目の当たりにするシーンです。
パンを分けてもらう瞬間に、涙が出そうになりました。
小さな一切れのパンにどれだけの命の重みが込められているのか、観ているこちらまで胸が締め付けられました。
あと、ウォルター・デュランティや周りの政府が真実を隠そうとするくだりは、本当にやるせない気持ちになりました。
ガレス・ジョーンズが必死に声を上げても、大きな力でかき消されてしまう。
現代でも情報の操作やフェイクニュースの問題ってありますよね。
映画を観ながら「今の時代も同じような危うさがあるな」と感じました。
全体を通して思ったのは、この映画は単なる歴史ドラマではなく、「真実を伝えることの意味」を問いかけてくる作品だということです。
ジャーナリストじゃなくても、自分が見たものや感じたことを正直に伝えることの大切さは、日常生活でもつながる部分があると思いました。
観終わったあとに重たさは残るけれど、それ以上に「知っておかなければいけない歴史を教えてくれる映画」だと強く感じました。
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まとめ
映画「赤い闇 スターリンの冷たい大地で」は、1930年代のソ連で起きたウクライナ飢饉（ホロドモール）の実態を追った、イギリス人ジャーナリスト・ガレス・ジョーンズの奮闘を描いた伝記映画です。
ガレス・ジョーンズはモスクワやウクライナの現場で人々の苦しみを目の当たりにし、独裁体制の中で真実を伝えようと必死に戦います。
映画では、ウォルター・デュランティやエイダ・ブルックスといった当時のジャーナリストたちの複雑な立場も描かれ、言論の自由やジャーナリズムの重要性が強く訴えられています。
観る者に強い衝撃を与える描写も多く、歴史の重みを感じさせる作品です。
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映画の内容を知ってから視聴するもよし、先に視聴してネタバレ記事で理解を深めるもよしです。
それでは最後までお読みいただきありがとうございました＾＾
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