1952年に公開されたアメリカ映画「アンデルセン物語」は、世界的な童話作家ハンス・クリスチャン・アンデルセンをモデルにしたファンタジックな伝記作品です。
監督はチャールズ・ビダー、主演は喜劇俳優としても知られるダニー・ケイ。
美しい音楽と華やかなバレエ、そしてどこか切ない恋を織り交ぜながら、一人の職人が夢を追い、物語を生み出していく過程を丁寧に描いています。
実在のアンデルセンを史実通りに描いたわけではなく、むしろ「童話のような人生」をテーマにした寓話的な物語として制作された作品です。
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映画「アンデルセン物語」解説
- 原題：Hans Christian Andersen
- 公開年：1952年
- 製作国：アメリカ
- 監督：チャールズ・ビダー
- 脚本：モス・ハート
- 音楽：フランク・レッサー
- 主演：ダニー・ケイ
- ジャンル：ミュージカル・伝記・ドラマ
「虹を掴む男」や「ホワイト・クリスマス」で知られるダニー・ケイが主演を務め、得意の歌とダンス、そして豊かな表情でアンデルセンの純粋な心を表現しています。
音楽面も非常に評価が高く、劇中では「The Ugly Duckling（みにくいアヒルの子）」や「Wonderful Copenhagen」など、今もなお愛される楽曲が披露されます。
物語は、現実のアンデルセンが体験したであろう孤独や創造への情熱を、フィクションを交えて優しく描いています。
キャスト
- ハンス・クリスチャン・アンデルセン：ダニー・ケイ
- 弟子ピーター：ジョーイ・ウォルシュ
- バレリーナのドロ：ジャン・メイル
- 舞台演出家ニールス：ファーリー・グレンジャー
- オットー：フィリップ・トーン
- ラーズ：ピーター・ヴォトリアン
主演のダニー・ケイは明るさと哀愁を併せ持った演技で観客を魅了しました。
ジャン・メイル演じるバレリーナ、ファーリー・グレンジャー演じる演出家など、舞台芸術の世界で生きる人々との関わりが物語に深みを与えています。
映画「アンデルセン物語」あらすじ・ネタバレ
デンマークの小さな町オーデンス。靴職人として生計を立てているアンデルセンは、仕事の合間に子どもたちへ童話を語ることを何よりの楽しみにしています。
話を聞く子どもたちはいつも笑顔で、町の広場には笑い声があふれていました。
しかしその一方で、子どもたちはアンデルセンの話を聞きたいがために学校をさぼるようになり、親たちや学校関係者の間で問題視されてしまいます。
町の大人たちは、アンデルセンが子どもたちに悪い影響を与えていると誤解し、町長に苦情を申し立てます。
行き場を失いかけたアンデルセンに、弟子のピーターは「旅に出て気分を変えよう」と提案します。
アンデルセンは心機一転、ピーターとともに夢にまで見たコペンハーゲンへ向かうことにしました。
バレエシューズを作る仕事
ところが到着早々、広場で無許可に歌を歌っていたことでアンデルセンは警察に捕まり、牢に入れられてしまいます。
困ったピーターが助けを求めて街を歩いていると、バレリーナが靴職人を探しているという噂を耳にします。
ピーターはアンデルセンの腕を売り込み、劇場主に紹介することに成功します。
やがて釈放されたアンデルセンは、劇場でバレエシューズを作る仕事を任されます。
その依頼主であるバレリーナのドロに、アンデルセンはひと目で心を奪われます。
ドロのために丁寧に仕立てた靴は見事に足に馴染み、舞台は大成功を収めました。
ところが、ドロが舞台演出家ニールスの妻であると知り、アンデルセンは深い衝撃を受けます。
心の整理がつかず部屋にこもり、想いを作品に昇華させるようにして書き上げたのが「人魚姫」でした。
みにくいアヒルの子
書き上げた原稿は風に飛ばされ、偶然ドロの家に届きます。
物語を読んだドロは深く感動し、アンデルセンの優しい心と創作への情熱を理解するようになります。
その後、ドロは別の町での舞台公演に向かうことになり、コペンハーゲンを離れていきました。
残されたアンデルセンは、街で出会った病弱な少年ラーズと仲良くなり、励ますために「みにくいアヒルの子」の物語を語ります。
ラーズの父は新聞社を経営しており、アンデルセンの物語に感銘を受けて新聞掲載を提案しました。
これをきっかけに、アンデルセンは童話作家としての道を歩み始めます。
人魚姫
やがてコペンハーゲンに戻ってきたドロは、「人魚姫」を題材にしたバレエ作品を作りたいとアンデルセンに申し出ます。
喜びに胸を躍らせるアンデルセンでしたが、弟子のピーターはまた傷つくのではないかと心配し、忠告します。
しかしアンデルセンは聞き入れず、ついにピーターを解雇してしまいます。
そして迎えた舞台の初日。
アンデルセンはドロにバレエシューズを届けようと劇場を訪ねますが、ニールスに見つかり、邪魔者として道具部屋に閉じ込められてしまいます。
そのことを知ったドロはすぐにアンデルセンを助け出し、夫の無礼を詫びました。
舞台は無事に成功を収め、観客の拍手が鳴りやみませんでした。
舞台裏
静まり返った舞台裏で、アンデルセンはドロに愛を告げます。
しかしドロはニールスを心から愛しており、アンデルセンの気持ちに応えることはできません。
ドロの穏やかな言葉に見送られ、アンデルセンは静かに劇場を去ります。
傷心のまま歩き出したアンデルセンは、道の途中でピーターと再会します。
アンデルセンはこれまでの行動を詫び、再び師弟として共に町へ戻ることを約束しました。
二人はオーデンスの街を目指し、歩きながら新しい物語を語り始めます。
結末
映画のラストでは、アンデルセンの語る声が再び響き渡り、子どもたちの笑顔が重なります。
夢と愛、そして創作への情熱を描いた物語は、まるで一篇の童話のように幕を閉じます。
「アンデルセン物語」は、現実の苦しみを超えて、想像の力で希望を描こうとする人間の美しさを伝える作品です。
華やかな音楽やダンスの裏に、芸術を生み出す者の孤独や切なさが静かに流れています。
映画「アンデルセン物語」感想
映画「アンデルセン物語（1952年）」を観て、まず心に残ったのは“夢を信じることの美しさ”でした。
ダニー・ケイ演じるアンデルセンの無邪気な笑顔や、人を疑うことを知らない純粋さがとても印象的で、観ているうちに自分まで子どもの頃の気持ちを思い出してしまいました。
この映画は、史実に忠実な伝記というよりも、「もしアンデルセンが童話の世界に生きていたら、こんなふうだったのかも」と感じさせる、ファンタジーのような温かさがあります。
靴職人としての素朴な暮らしの中で、子どもたちに物語を語る姿は本当に幸せそうで、まるで“物語を生み出す喜び”そのものを映しているようでした。
一方で、バレリーナのドロに恋をして傷つくシーンでは、胸が締め付けられるようでした。
アンデルセンの愛は報われないけれど、その想いが「人魚姫」という名作につながっていく流れが本当に切なくて美しいんです。
好きな人に届かなかった想いが、物語の中で永遠に生き続ける──このあたりはまさにアンデルセンらしいテーマだと思いました。
また、ダニー・ケイの歌と踊りが本当に魅力的で、特に「みにくいアヒルの子」を子どもたちに語る場面は涙腺がゆるみました。
あの場面だけでも、この映画を観る価値があると思います。
明るく笑いながらも、どこか寂しさを漂わせる表情に、芸術家としての孤独がにじみ出ていて、本当に深い演技でした。
この映画の好きなところは、ただの「成功物語」ではなく、夢を持つことの尊さや、人を想う優しさを静かに描いているところです。
アンデルセンは最後まで“子どもの心”を失わないまま、優しいまなざしで世界を見つめ続ける。
その姿に、少し大人になって忘れかけていた純粋さを思い出させてもらいました。
観終わったあと、心がほっと温かくなって、少し切なくなる映画です。
派手な展開はないけれど、静かに心に沁みてくる。
まるで、アンデルセン自身が語る童話のように。
大人になった今だからこそ、この映画のやさしさや痛みがより深く感じられる気がします。
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まとめ
映画「アンデルセン物語（1952年）」は、童話作家ハンス・クリスチャン・アンデルセンの創作の原点を、音楽とバレエを通して美しく描いたファンタジー伝記映画です。
ダニー・ケイの優しさあふれる演技、切ない恋心、そして「人魚姫」や「みにくいアヒルの子」などの誕生につながる心の軌跡が丁寧に描かれています。
派手な演出はなくとも、観終わったあとに残るのは温かさと少しの切なさ。
まるでアンデルセンの童話そのもののような、やさしい余韻を感じさせる名作です。
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