映画「丑三つの村」は、観たあともしばらく胸の奥に重く残るような、そんな作品でした。
昭和初期の岡山の寒村を舞台に、実際に起こった津山事件をもとに描かれているのですが、あまりにも生々しく、そして切実で、感情をどこに置けばいいのか迷ってしまうような気持ちになったんです。
ここでは、この問題作のあらすじを、結末まで含めてたっぷりお伝えしていきます。
内容にはネタバレが含まれるので、鑑賞予定の方はここで一度立ち止まってもらった方がいいかもしれません。
映画「丑三つの村」解説
1983年に公開された邦画『丑三つの村』は、実際に岡山県で起こった「津山事件」を題材にした作品です。
戦前の日本の寒村を舞台に、極限まで追い詰められた青年が起こす凄惨な大量殺人を描いた衝撃作で、静かな狂気と社会の残酷さがじわじわと伝わってくるような映画でした。
監督は『赫い髪の女』などで知られる田中登。
抑えた演出ながら、ラストに向けて一気に緊迫感が増していく構成が特徴的で、観終わったあとに重たい余韻を残します。
似た題材としては横溝正史原作の『八つ墓村』もありますが、『丑三つの村』のほうが実際の事件に近い描写が多く、より生々しい空気を感じさせる仕上がりになっています。
社会の中での孤立や、病気による偏見、村の閉鎖性といったテーマを真正面から描いており、単なるホラーやサスペンスというよりも、人間の弱さや闇を静かにえぐってくるような感覚がありました。
『丑三つの村』の主なキャスト
主演の犬丸継男を演じたのは古尾谷雅人さん。
抑えた演技と内に秘めた狂気のバランスが絶妙で、見ているこちらまで不安定な感情に引きずり込まれるような存在感でした。
継男と二人暮らしをしていた祖母・はん役には原泉さん。
長年のキャリアが光る演技で、無償の愛と不安定さの入り混じったキャラクターを丁寧に表現していました。
田中美佐子さんが演じたのは幼馴染のやすよ。
初々しさと残酷さが同居する女性像を繊細に演じていて、継男の最後の希望となるような存在でした。
他にも、村に住む複数の女性たちとして五月みどりさん(ミオコ役)、池波志乃さん(えり子役)、大場久美子さん(和子役)などが登場。
それぞれが継男との複雑な関係性を背負いながら、村の濃密な人間関係を演出していました。
また、継男に敵対的な態度を取る村の男たちとして、石橋蓮司さん(赤木中次役)、ビートきよしさん(赤木巌役)といった個性派俳優が脇を固めています。
映画「丑三つの村」あらすじ・ネタバレ!
序盤から、どこか息苦しい空気が漂っていました。
戦前の岡山、農村地帯の小さな村では、若者の出征が盛大に祝われていました。
赤木巌が出征する場面で、周囲が誇らしげに送り出すなか、その母親が静かに涙を流している姿が印象的でした。
そして、その光景を見つめるのが犬丸継男。物静かな青年で、村一番の秀才として知られていました。
彼は祖母のはんと二人で暮らしており、教師になる夢を持って毎日机に向かっていたのですが、ある日、咳が止まらなくなり、診察を受けたところ「肺病」だと告げられます。
現代でいうところの結核ですね。
医師からは「3か月くらい安静にしていれば大丈夫」と言われていたのに、その診断が継男の人生を大きく狂わせていくんです。
村のしきたりと崩れていく人間関係
村には、独特な風習が残っていました。
夜になると「夜這い」と呼ばれる、今の感覚では信じられないような習慣が普通に行われていたんです。
出征した男の妻に他の男が夜這いをかける、そんな光景を目撃してしまった継男は、どこかで「壊れてしまった」ように見えました。
やがて、えり子やミオコ、和子など、村の女たちと関係を持ち始める継男。
ただ、それは愛情というより、どこかで自分の存在価値を確かめたいがための行動のように映りました。
しかもその関係は、どれも一方的なもので、満たされることはありません。
断られたり、拒絶されたり、誤解されたり、そしてどんどん孤独になっていきます。
極めつけは、徴兵検査で出兵不可の烙印を押されてしまったこと。
出征することが“名誉”とされるこの時代にあって、「戦争に行けない男」は無能者として扱われる。村人たちはあからさまに継男を避け、冷たい目で見るようになっていきます。
それでも祖母のはんだけは、唯一味方でいてくれる存在でした。
けれどもその支えすらも、継男は自ら壊してしまうんです。
壊れていく心と、最後の一線を越える瞬間
結核という病気だけでなく、村での孤立や拒絶、差別の積み重ね。
それに加えて、自警団による暴力や、女性たちからの拒絶、教師になる夢すらも絶たれた継男にとって、もう村には居場所がなかったのかもしれません。
徐々に心を閉ざしていき、最後は「自分が殺される」とまで怯えるようになります。
銃を手に入れ、刀を手に入れ、誰とも関わらず、部屋で撃ち続ける姿は、本当に恐ろしいものがありました。
そしてある日、祖母にまで手をかけようとし、そのことで家を飛び出されたことが決定打になってしまったように思えます。
自分に好意を持っていたやすよにまで見放された継男は、ついに“鬼”になることを決意しました。
「戦場へ行く」と書いた手紙を残し、全てを終わらせる準備を始めるんです。
映画「丑三つの村」衝撃のラストと残されたもの
そしてやってきた、10月20日。
村の電気を止め、闇夜のなかで継男は軍服をまとい、懐中電灯を頭に巻き、銃と日本刀を手にします。
その姿は、まさに現代の都市伝説のような異様な光景でした。
まずは祖母のはんを斧で殺害。そして村中をまわり、大人も子供も区別なく次々と手にかけていきます。
あまりにも一方的で、あまりにも非情な行動。
でもそこには、積もり積もった怒りや孤独、差別に対する叫びがこもっているようにも見えました。
これは、ただの大量殺人ではなく、積み重ねられた“絶望の記録”だったのかもしれません。
やがて、やすよが手紙を読んで駆けつけてきます。
涙ながらに対峙する二人。でも、もう継男は引き返せないところまで来ていました。
この先の結末は、ぜひ映画で確かめてほしいと思います。
自分は観終わったあと、何も言葉が出てきませんでした。
ただただ、苦しくて、悲しくて、悔しくて。
戦争という時代の空気、村社会の閉鎖性、病に対する無知、そして人間の弱さ。
全部が積み重なった結果だったとしか言いようがないです。
映画「丑三つの村」感想
この作品は、間違いなく問題作です。
でも、観る価値がある映画だと思います。
時代の空気を再現しているだけでなく、「人が追い詰められるとはどういうことか」を、これでもかというほど突きつけてきます。
どんなに強そうに見える人でも、ほんの少しずつ崩れていくことがある。
実際に起きた津山事件をもとにしているということもあり、フィクションの中に現実が滲み出ていて、気づけば画面から目が離せなくなっていました。
村の人々が本当に悪だったのか。継男だけが可哀そうだったのか。
単純な善悪で語れないからこそ、モヤモヤが残る。
でも、そのモヤモヤこそが、この映画の持つ最大の問いなんだと思います。
あまりにも重いテーマなので、観るタイミングは選んだ方がいいかもしれません。
でも、心の準備ができたときにぜひ一度向き合ってみてほしい作品です。
誰かの叫びが、画面の向こうから聞こえてくるような気がするはずです。
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まとめ
映画『丑三つの村』は、実際の大量殺人事件「津山三十人殺し」を題材にした衝撃作です。
主演の古尾谷雅人さんが怪演を見せる主人公・宅間を中心に、村社会の閉鎖性と狂気がリアルに描かれています。
人間の闇に迫るその描写は、観る人の心に重く残ります。
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未視聴の方は、この機会にぜひ一度ご覧になってみてください。
重く深いテーマを持つ本作は、映画ファンなら一度は観ておきたい一本です。
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