映画「ドリーム・ホース」実話の出来事とは?映画と比較を紹介

映画「ドリーム・ホース」実話の出来事とは?映画と比較を紹介
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映画『ドリーム・ホース』は、ウェールズの小さな町で実際に起きた感動の物語を描いた作品です。

平凡な主婦ジャン・ヴォークが仲間たちと一頭の競走馬を育て、奇跡の勝利をつかむまでのストーリーは、まさに“夢が走り出す”ような実話がベースになっています。

この記事では、その実際の出来事とは何だったのか、そして映画とどこが違うのかを詳しく比較して紹介します。

 

目次

映画「ドリーム・ホース」実話の出来事とは?

映画「ドリーム・ホース」実話の出来事とは?映画と比較を紹介

『ドリーム・ホース』(原題:Dream Horse)は、2000年代にウェールズの小さな炭鉱町で実際に起こった、競馬界の常識を覆す奇跡のストーリーを映画化したものです。

主役はプロでも富裕層でもなく、ごく普通の労働者たち。

彼らが出資し育てた競走馬が、イギリスで最も過酷な障害レースの一つである「ウェルシュ・ナショナル」で優勝するという、事実に基づいた感動の物語です。

 

主人公ジャン・ヴォークスとは?

ジャン・ヴォークスは、南ウェールズのセーフン村に住む中年女性でした。

昼はスーパーのレジ係、夜はソーシャルクラブの清掃係として働き、家計を支える日々。

競馬の知識も経験もゼロでしたが、動物の飼育には長けていました。

若いころは鳩や犬のブリーダーとして地元で知られており、「自分の手で何かを育てること」には強い情熱を持っていたのです。

 

きっかけはパブでの偶然の会話だった

ある日、地元のパブで耳にした話が彼女の人生を一変させます。

かつて競走馬の共同オーナーだった男性、ハワード・デイヴィスが話す「庶民でも馬主になれる」というエピソードが、ジャンに火をつけました。

「自分たちでも挑戦できるのではないか」という思いから、独自の出資システムを考案します。

 

「ドリーム・アライアンス」の誕生

ジャンは、地元の知人や友人、パブの常連客に声をかけて出資者を募りました。

週10ポンドずつを出し合い、23人が集まったことで「ドリーム・アライアンス(Dream Alliance)」という競走馬の共同所有グループが誕生します。

出資者には、工場労働者、郵便局員、失業者など、裕福とは言えない人々ばかりでした。

それでも彼らは「ただの夢物語ではない」と本気で信じ、馬を育てるプロジェクトに取り組んでいきます。

 

繁殖牝馬「ルーベル」の購入と血統の選定

ジャンたちは繁殖牝馬「ルーベル(Rewbell)」をたった350ポンドで購入します。

過去の戦績は振るわず、血統的にもエリートとは言えない馬でしたが、それしか選択肢がありませんでした。

種牡馬として選んだのは「ビアンビアン(Bien Bien)」というアメリカ産の障害レース系種牡馬で、名血ではあるものの、当時のイギリス競馬界ではやや地味な存在と見なされていました。

 

ドリームアライアンスの誕生と調教の日々

2001年に「ドリームアライアンス」が誕生。生まれた直後から、ジャンと出資者たちは愛情を込めて馬を育てました。

調教師には、南西イングランドを拠点とするフィリップ・ホブスが選ばれました。

ホブスは当時まだ中堅であり、トップ調教師とは言えませんでしたが、丁寧な指導でドリームアライアンスのポテンシャルを引き出していきます。

馬は平地ではなく、障害レースでの活躍を目指す方針が採られました

初出走から注目を集めるまでの道のり

2004年にレースデビュー。

最初の数戦は注目される存在ではなく、下位レースで経験を積んでいく段階でした。

しかし、2006年に「パース・ノヴィスチェイス」で初勝利を挙げると、徐々にメディアやファンの注目を集めるようになります。

庶民の出資馬がレースに勝ち上がっていく姿は、多くの人々に希望を与えました。

 

2008年、レース中の大怪我と引退の危機

順調だった矢先、2008年にドリームアライアンスは大怪我を負います。

チェルトナム競馬場でのレース中に前脚の屈腱を断裂。

この怪我は競走馬にとって致命的で、多くの馬主は安楽死を選択するようなレベルでした。

しかし、ジャンと出資者たちは命を諦めず、数千ポンドをかけて治療を行い、ニューマーケットにある動物病院で再生手術を受けさせます。

 

奇跡の復活とウェルシュ・ナショナル優勝

なんと、怪我からわずか1年後、ドリームアライアンスは奇跡的にレースへ復帰します。

そして2009年、イギリスでもっとも権威ある障害レースの一つ「ウェルシュ・ナショナル」に出走。

重馬場をものともせずに追い上げ、圧巻の走りで1位でゴール。

庶民の出資馬が英国競馬の頂点を制するという前代未聞の出来事に、出資者たちはもちろん、観客、競馬関係者までもが感涙しました。

 

優勝後の人生と引退後のドリームアライアンス

その後もいくつかのレースに出場しましたが、怪我の後遺症と加齢もあり、2012年に正式に引退。

引退後は出資者たちの意向で静かな牧場で余生を送り、最期まで大切に扱われました。

ジャンもまた、「馬を売って儲けることは一度も考えなかった」と語っています。

 

映画「ドリーム・ホース」実話と映画と比較

映画「ドリーム・ホース」実話の出来事とは?映画と比較を紹介

映画『ドリーム・ホース』は、庶民たちが一頭の競走馬に夢を託し、奇跡の勝利を掴む実話をもとにしています。

ウェールズの田舎町で生まれた小さな奇跡。

それだけでも十分にドラマチックですが、映画にはやはりフィクションならではの演出が加えられています。

この記事では、実話と映画との「違い」に絞って、脚色や省略されたポイントを詳しく紹介していきます。

 

ジャン・ヴォークの人物像が強調されている

実際のジャン・ヴォークは、特別な野心があったわけではなく、動物好きなパート主婦というごく普通の人物でした。

馬の繁殖を始めたのも「何か面白いことがしたい」という軽いきっかけだったと語られています。

一方、映画ではジャンは家庭と仕事に追われるなかで鬱屈とした思いを抱き、「人生に意味を持たせたい」と競馬に情熱を注ぐ人物として描かれています。

観客が感情移入しやすいように、内面的な動機が明確に脚色されているのが特徴です。

 

夫婦関係にドラマ性が加えられている

映画では、ジャンの夫・ブライアンが最初は夢に否定的で、夫婦の間にすれ違いが描かれます。

その後、馬への情熱を通じて夫婦の絆が再生する展開になっています。

しかし、実話ではこのような劇的な関係の変化は報じられていません。

ブライアンも出資者のひとりとして協力しており、映画のような夫婦の対立や和解はドラマ上の演出と考えられます。

 

出資メンバーのキャラクターはデフォルメされている

実際の出資者たちは、地元のパブで顔を合わせるような普通の労働者階級の人々でした。

職業もバラバラで、月10ポンドの出資という気軽なスタートでした。

映画ではそれぞれの出資者に強めの個性が与えられ、ギャグ要素や人間ドラマとして盛り上がるように描かれています。

現実にはなかった衝突や協力のやりとりが追加され、感動や笑いの要素として物語に色づけされています。

 

怪我と治療をめぐる葛藤が脚色されている

ドリームアライアンスがレース中に大怪我を負い、引退の危機に直面するという出来事は事実です。

実際には幹細胞治療を受けて復活し、再びレースに挑戦します。

ただし、映画では治療をめぐって出資者たちの間で激しい意見の対立があり、ジャンが涙ながらに説得する場面が盛り込まれています。

現実のエピソードには、そこまでの対立やドラマチックな決断劇は確認されておらず、物語を盛り上げるための演出として付け加えられたものです。

 

ウェルシュ・ナショナルの勝利シーンが誇張されている

ドリームアライアンスが2009年にウェルシュ・ナショナルを制したのは事実ですが、映画ではこのレースが物語のクライマックスとして大きく描かれ、出資者全員が一体となって歓喜するシーンが登場します。

実際には、全メンバーが現地に集まっていたわけではなく、映画ほど感情の爆発的な共有があったかどうかは不明です。

とはいえ、勝利自体が奇跡的だったのは間違いなく、感動をより深く伝えるための演出と見ることができます。

 

家族や引退後の描写が省略されている

実話では、ジャンの家庭にはより複雑な事情があり、息子の存在や家庭生活に関するエピソードも報じられています。

また、ドリームアライアンスの引退後についても、出資者全員で引退後の世話や余生を見守っていたという美談もあります。

しかし映画では、主題を「夢の実現」と「勝利の瞬間」に集中させるため、そうした細かい背景やアフターストーリーはほとんど描かれていません。

 

まとめ

映画『ドリーム・ホース』は、実際にイギリス・ウェールズで起きた奇跡のような実話をベースにしています。

一頭の無名の馬に希望を託したのは、特別な人たちではなく、ごく普通の町の住人たち。

彼らがわずかな出資を積み重ね、情熱と絆でドリームアライアンスを育て上げた物語には、誰の胸にも響く普遍的な力があります。

とはいえ、映画では実話の流れをなぞりながらも、登場人物の性格や内面の動機づけ、夫婦関係の葛藤、出資者たちの衝突や成長など、感情のドラマをより明確に伝えるための脚色が随所に加えられています。

また、怪我からの復活劇やクライマックスの演出にも、フィクションとしての盛り上げが意識されています。

しかし、こうした演出はすべて、物語の本質――「夢はどんな境遇からでも走り出すことができる」というメッセージをより深く、広く届けるための工夫にすぎません。

現実に起きたこの出来事が、多くの人に感動を与える映画になった背景には、事実そのものの持つ強さと、それを誠実に描こうとした作り手の思いがあったと言えるでしょう。

実話と映画を比較することで見えてくるのは、脚色の有無ではなく、「物語の芯」がいかに丁寧に描かれているかということ。

その点で『ドリーム・ホース』は、実話に基づく映画としても非常に誠実で、観る者の心をしっかりとつかむ作品に仕上がっています。

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