映画『ロケットマン』は、イギリスの伝説的ミュージシャン、エルトン・ジョンの人生を描いた作品です。
ただの伝記映画ではなく、現実と幻想が入り混じったミュージカルのような作りになっているのが特徴です。
初めて観たとき、正直ちょっと戸惑いました。
けれど観終わったあとには、胸の奥に残る熱のようなものがありました。
今回は、エルトン・ジョンという人物の魅力、映画の中で話題になった「気まずいシーン」、そして実話との違いについて、自分なりの視点でじっくり語っていきます。
エルトン・ジョンとはどんな人物か
エルトン・ジョンは1947年にイギリスのロンドン郊外で生まれました。
幼い頃からピアノに親しみ、驚くほど早い時期から音楽の才能を見せていました。
家庭環境は恵まれていたとは言いがたく、両親の不仲が少年時代の心に深い影を落とします。
映画の中でもその部分はかなり丁寧に描かれていて、特に父親との関係は胸が痛くなるほどです。
エルトン・ジョンがプロのミュージシャンを目指したのは十代の頃で、当時のロンドン音楽シーンはビートルズの影響で急速に変化していました。
そこでチャンスを掴み、ソングライターのバーニー・トーピンと出会います。
この出会いが人生を大きく変えることになります。
映画を観ると、このバーニーとの絆がどれほど深いものだったのかが伝わってきます。
音楽の相棒であり、精神的な支えでもあったバーニーとの関係は、エルトン・ジョンの音楽を語るうえで欠かせない要素です。
エルトン・ジョンの音楽スタイルと魅力
エルトン・ジョンの音楽を一言で表すなら、「感情の色彩がそのまま音になったような世界」と言えるでしょう。
ピアノを中心にしたメロディラインは力強く、それでいて繊細です。
ロックとポップスの中間を行くような絶妙なバランス感覚を持ち、楽曲ごとに表情がまったく違います。
特に1970年代の代表曲「Your Song」や「Rocket Man」には、若い頃の純粋さや孤独、そして夢への憧れが詰まっています。
どんなに華やかなステージに立っても、心の奥にはいつも寂しさがあったのかもしれません。
そんな内面の揺らぎを、音楽で包み込むように歌い上げているのがエルトン・ジョンの魅力です。
ライブ映像を観ると、ピアノの前に座った瞬間に空気が変わるのがわかります。
観客を圧倒するようなエネルギーと、心を寄り添わせるような温かさが同居しているのです。
ステージ衣装の派手さばかりが注目されがちですが、その奥には繊細で真っすぐな音楽への情熱があります。
初めて「Goodbye Yellow Brick Road」を聴いたとき、メロディの美しさと歌詞の切なさに驚きました。
まるで映画のワンシーンのように情景が浮かんできて、聴き終わるころには少し泣きそうになったほどです。
エルトン・ジョンの音楽は、人生の苦しさや孤独を知っている人ほど心に響くのかもしれません。
華やかなショービズ界の裏で傷つきながらも、音楽を通して自分を取り戻してきた姿が、そのまま音に宿っているように感じます。
映画「ロケットマン」気まずいシーンはある?
『ロケットマン』を観る前に「気まずいシーンがある」と聞いて、少し身構える人も多いと思います。
実際、エルトン・ジョンの人生には性的アイデンティティの葛藤や恋愛関係の描写があり、映画でもその部分は隠さず描かれています。
確かに一部のシーンでは性的な表現がありますが、決して過激さを狙ったものではなく、エルトン・ジョンという人間の孤独と自己受容の過程を描くうえで必要なものに感じました。
私自身も最初は少し気まずく感じた部分がありましたが、ストーリーが進むにつれてそれが単なる恋愛描写ではないことに気づきました。
愛されたい気持ち、誰かに理解されたい願い、それを見失った瞬間の苦しさ。
そうした感情を音楽と共に見せることで、映画全体が深い人間ドラマになっています。
エルトン・ジョンは公の場で自分が同性愛者であることをカミングアウトしています。
映画では、その事実を隠すことなく、むしろ誇りを持って描いているように感じました。
その勇気があったからこそ、世界中のファンがエルトン・ジョンを「本当の意味でのスター」として受け入れているのだと思います。
映画「ロケットマン」実話と映画の違い
この映画を観ていて思ったのは、「どこまでが本当なんだろう?」ということでした。
『ロケットマン』は実話をベースにしていますが、すべてが現実の再現ではありません。
むしろエルトン・ジョンの心の中を表現した“半分現実・半分幻想”のような構成です。
たとえば、演奏中に宙に浮いたり、観客が空中で踊るシーンなど、明らかに現実離れした演出があります。
でもその幻想的な演出こそが、エルトン・ジョンの音楽が生まれる瞬間の「心の中の景色」を映し出しているように感じました。
現実の出来事をただ並べるのではなく、感情の波を音楽で可視化する。
それが『ロケットマン』の最大の魅力です。
実際のエルトン・ジョンも、映画の内容を公認しており、「この映画は真実をそのままではなく、感情の真実を描いている」と語っています。
この言葉を聞いたとき、なるほどと思いました。
事実よりも心の真実を描く。それが芸術の力なのかもしれません。
エルトン・ジョンの家族関係の描写
映画の中で印象的なのが、両親との関係の描き方です。
特に父親は冷たく、息子の才能を認めようとしません。現実の父親もかなり厳格な性格だったようで、愛情表現がほとんどなかったといいます。
母親との関係も複雑で、愛情と支配が入り混じったような空気がありました。
映画では母親がエルトン・ジョンに「あなたの生き方は理解できない」と告げるシーンがあります。
この言葉が胸に刺さる人も多いでしょう。
家族の理解を得られない孤独、それでも自分らしく生きようとする意志。
そこにエルトン・ジョンの人間らしさが凝縮されているように感じました。
バーニー・トーピンとの友情
音楽パートナーであるバーニー・トーピンとの関係は、映画の中でも最も感動的な部分です。
バーニーはエルトン・ジョンの歌詞を書き、エルトン・ジョンは曲をつける。
ふたりの絆は音楽を通して築かれていきます。
この関係には一種の“愛”のようなものを感じます。
恋愛ではないけれど、誰よりも深く理解し合える存在。
私自身もこの部分にとても心を動かされました。人と人が本気で信頼し合うって、こういうことなんだなと。
現実のエルトン・ジョンとバーニーは、今も友情を続けています。
映画のラストでふたりの現在が紹介される場面には、自然と笑みがこぼれました。
映画「ロケットマン」心に残ったこと
正直に言うと、『ロケットマン』は最初から最後まで明るい映画ではありません。
どちらかというと痛みを伴う作品です。
でもその痛みの中に、確かな希望とエネルギーがある。
エルトン・ジョンの音楽が人々に響く理由が、そこに詰まっている気がします。
私はエルトン・ジョンの曲をリアルタイムで聴いてきた世代ではありません。
けれど、この映画を通して「音楽って人生そのものなんだ」と実感しました。
誰かに理解されたい、愛されたいという思いが、そのままメロディになって世界中に届いている。
そう考えると、音楽の力って本当にすごいです。
観終わったあと、なんだか自分の過去まで少し許せるような気持ちになりました。
どんな人にも欠けた部分があって、それを受け入れる勇気をくれる映画だと思います。
まとめ
映画「ロケットマン」は、エルトン・ジョンという人物の華やかさだけでなく、人間としての弱さや孤独まで真正面から描いた作品です。
派手な衣装や音楽の場面に隠れてしまいがちですが、実際には家族との関係、性的アイデンティティ、依存症など、誰もが抱える“痛み”に真正面から向き合う映画でもあります。
確かに一部には気まずいシーンもあります。
けれど、それはエルトン・ジョンの人生をありのまま描こうとした結果であって、決して過剰な演出ではありません。
むしろそのリアルさが物語の説得力を高めています。
実話との違いもいくつかありますが、映画はあくまで“エルトン・ジョン自身の心の物語”として構成されており、事実を忠実に追うだけでは見えない心情や成長を描き出しています。
音楽映画としてだけでなく、人生そのものを再生する物語として観ると、より深く楽しめるでしょう。
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映像と音楽が見事に融合したこの作品を、自宅でじっくり味わってみてください。
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[…] 映画「ロケットマン」は、2019年に公開されたイギリス映画で、世界的ミュージシャンのエルトン・ジョンの半生を描いた作品です。 […]