フランス発の映画「ココ・アヴァン・シャネル」は、世界的ファッションブランドCHANELの創業者であるココ・シャネルの若き日を描いた作品です。
けれども、実際に映画を観てみると「これって本当にあった話?」と疑問に感じた場面もちらほらありました。
この作品がどこまで実話をベースにしているのか、あるいは映画的な演出なのか。
その違いや背景を探ってみたいと思います。
そして最後に、気になるココ・シャネルの晩年や死因についても触れていきます。
実際に観て感じた個人的な違和感や共感も含めながら、映画と現実のシャネル像を照らし合わせていきます。
映画「ココ・アヴァン・シャネル」実話との違いとは?
映画はとても美しく仕上げられていて、シャネルの内面が繊細に描かれているのが印象的です。
でも、よくよく調べてみると「あれ?それはちょっと美化しすぎでは?」という箇所がいくつか出てきます。
映画として成立させるために脚色されている部分が多く、事実に忠実というより“詩的な伝記映画”という方がしっくりくるかもしれません。
幼少期の描写
映画の冒頭、孤児院での生活が静かに、そしてどこか幻想的に描かれていたのが印象に残っています。
窓辺で外を見つめる幼いシャネルの姿は、とても絵になっていました。
ただ、実際の孤児院生活はもっと過酷だったとされています。
特に修道女たちの厳格な教育方針や、身寄りのない子どもに向けられる社会のまなざしを考えると、映画のように静かで穏やかなものではなかったはずです。
当時の社会的立場を考えると、親がいないというだけで差別や偏見にさらされていたことは想像に難くありません。
映画ではその“社会的ハンディ”が少し弱く描かれている印象がありました。
恋愛の描写
映画の大きな軸となっているのが、アーサー“ボーイ”カペルとの恋愛関係です。
シャネルが心から愛し、そして喪失する――この物語は観る者の心を動かす展開になっています。
でも、現実のシャネルはそこまで一途でロマンチックな人だったのかと考えると、少し疑問も残ります。
むしろ、冷静に状況を見極めて動くビジネスパーソンとしての一面が強かったのではないでしょうか。
確かにボーイ・カペルは、シャネルの人生にとって重要な人物です。
ただ、映画のように「愛がすべて」だったかというと、実際はもっと割り切った関係だったとも言われています。
恋愛よりも独立、自立を優先していたような気がします。
ファッションの世界に入るきっかけ
映画では、愛する人の死や孤独感がきっかけでファッションの道に入ったような描写がありました。
でも、実際はもう少し現実的だったように思います。
帽子店から始まり、自分の感性で「着たい服を作る」という純粋な欲求があった。
その中には商機を見抜く目もあったでしょうし、男性中心だった当時の社会でどうやってサバイブするかという強かな戦略もあったはずです。
その辺りが映画では少しロマンに寄りすぎていて、「意志の強いデザイナー」というより「傷ついた少女が立ち上がる物語」に見えてしまったのが少し物足りなかったかもしれません。
映画で描かれなかった晩年のシャネル
「ココ・アヴァン・シャネル」は若い頃で物語が終わっています。
けれど、実はその後の人生こそが本番といえるようなドラマに満ちているんです。
とくに第二次世界大戦中の行動や、戦後の復活劇には目を見張るものがあります。
ナチスとの関係には触れずじまい
戦時中、シャネルはナチスドイツの将校と親しい関係にあったとされており、そのことで戦後は非難の的になりました。
これはシャネルの人生において避けて通れない一章ですが、映画ではまったく触れられていません。
政治的な立場や思想ではなく、愛や生存のための選択だったという見方もあります。
でも、こうした“影”の部分を描かずに終わってしまうと、どうしても一面的な人物像になってしまう気がしました。
ただの“悲劇の女性”や“恋に生きたデザイナー”というだけでは、シャネルという存在は説明しきれないのです。
70代での復帰は圧巻だった
戦後しばらく沈黙していたシャネルが、70代になってから再びパリ・コレクションで脚光を浴びる――これってとんでもないことだと思います。
しかも、当時はディオールのような“ニュールック”が主流で、シャネルのミニマルなデザインは時代遅れとまで言われていました。
それでも信念を曲げず、自分のスタイルを貫いて再評価された流れには、ただただ感動します。
人は何歳からでもやり直せる、というより「シャネルはやり直す必要すらなかった」とすら思えてくるから不思議です。
映画「ココ・アヴァン・シャネル」ココシャネルの死因も解説
人生の終わり方を知ることで、ようやく一人の人物の全体像が見えてくることがあります。
ココ・シャネルの最期も、まさにそんな感じでした。
リッツホテルで迎えた静かな夜
1971年1月、シャネルはパリのリッツ・ホテルの一室で眠るように亡くなったといわれています。
死因は心臓発作。
年齢は88歳でした。
リッツに暮らしながら、毎朝仕事場へ通っていたそうです。
その姿を想像すると、豪華さよりも自分の居場所を最後まで守り続けたという印象を受けました。
何よりもすごいのは、最期の夜もきっと「次の日に向けた準備」をしていたという点です。
明日のために今日を整える。
その姿勢が変わらなかったという事実に、深く胸を打たれました。
「人生そのものがブランド」だったという実感
シャネルは最期まで現役でした。
アトリエに顔を出し、デザインの指示を出し、意見を持ち続けたとされています。
その事実だけで、もう十分に説得力があるような気がします。
映画では触れられていない晩年の彼女の姿に、むしろ本当のシャネル像が詰まっているのかもしれません。
生き方そのものがスタイルであり、ブランドであり、時代の象徴でした。
「流行ではなくスタイルを作る」。
この言葉の重みは、年齢を重ねれば重ねるほど響いてきます。
ココ・シャネルのプロフィール
- 本名: ガブリエル・ボヌール・シャネル(Gabrielle Bonheur Chanel)
- 通称: ココ・シャネル(Coco Chanel)
- 生年月日: 1883年8月19日
- 没年月日: 1971年1月10日(享年87歳)
- 出生地: フランス・ソミュール(Saumur)
- 職業: ファッションデザイナー、実業家
- ブランド: CHANEL(シャネル)創業者
- 代表作・発明:
- シャネルスーツ
- リトル・ブラック・ドレス(LBD)
- シャネルNo.5(香水)
- ツイード素材の女性用ジャケット
- 女性用パンツスタイルの普及
特徴・功績:
- コルセットを排した動きやすい服をデザインし、女性ファッションの常識を変えた
- モード界に“シンプルの美”を持ち込んだ先駆者
- 女性の社会的地位向上ともリンクするスタイルを打ち出した
性格・評判:
- 自立心が非常に強く、感情より理性で動くタイプだったとされる
- 華やかさの裏に孤独と鋭い観察眼を持ち、実業家としても一流だった
- 恋愛は多かったが、結婚はしていない
死因: 心臓発作。最期はパリのリッツ・ホテルで静かに息を引き取った
まとめ
映画「ココ・アヴァン・シャネル」は、シャネルという人物を知る最初の入口としてはとても素敵な作品だと思います。
でも、その先にある「本当の彼女」を知りたくなったら、実際の歴史や背景にも目を向けると、より深く味わえる気がします。
映画を観たあと、いろいろな資料を読み返したくなりました。
映画はあくまで一つの“表現”であって、現実の人物はもっと多面的で矛盾に満ちている。
そこがまた面白く、そして人間的なんですよね。
シャネルの人生には、まだまだ知られていない魅力がたくさん詰まっていると感じました。
今からでも遅くないので、もっと深掘りしてみたいと思っています。
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