映画『英国王のスピーチ』は、吃音に悩むイギリス国王ジョージ6世が、言語療法士との出会いをきっかけにスピーチを成功させるまでの実話をもとにした作品です。
本記事では、ジョージ6世とはどのような人物だったのかを詳しく解説するとともに、映画と史実の違いや共通点もわかりやすく比較して紹介します。
感動の背景にあるリアルな歴史を知ることで、作品の深みがより味わえるはずです。
映画「英国王のスピーチ」実話のジョージ6世とは?
映画『英国王のスピーチ』は、イギリス国王ジョージ6世が吃音を克服し、国民に向けてスピーチを成功させるまでの実話に基づいた作品です。
第二次世界大戦の開戦直前という重い時代背景のなかで、国王としての重責と向き合いながら成長していく姿が描かれています。
この作品の主人公となったジョージ6世は、どのような人物だったのでしょうか。
実在のエピソードをもとに、詳しく紹介します。
ジョージ6世の本名と生い立ち
ジョージ6世の本名はアルバート・フレデリック・アーサー・ジョージといいます。
家族からは「バーティ」という愛称で呼ばれていました。
父はジョージ5世、母はメアリー王妃で、兄にはエドワード8世がいます。
王位を継ぐ予定は本来なかった次男として育ち、幼い頃からプレッシャーの強い王族の環境のなかで、言葉に関する悩みを抱えながら過ごしました。
幼いころからの吃音の悩み
アルバート王子は幼いころから言葉がつかえる吃音に悩まされていました。
当時のイギリス王室では、人前でスピーチを行うことが重要な役目とされており、言葉がうまく出ないことは大きな障害と捉えられていました。
公務でスピーチが求められるたびに強い不安と緊張に襲われ、自信を持てないまま大人になっていきます。
思いがけない王位継承
1936年、兄であるエドワード8世が、アメリカ人の離婚歴のある女性ウォリス・シンプソンとの結婚を望み、王位を放棄するという事態が起こります。
この出来事により、次男だったアルバート王子が王位を継ぐことになります。
ジョージ6世として即位したのは1936年12月。
言葉への不安がぬぐえないまま、イギリス国民を代表する立場に立つことになったのです。
言語療法士ライオネル・ローグとの出会い
吃音の改善を願い、出会ったのが言語療法士のライオネル・ローグでした。
ローグはオーストラリア出身で、医師の資格は持っていませんでしたが、独自の経験と知識をもとに、演劇や呼吸法を取り入れたアプローチで治療を行っていました。
最初は互いに戸惑いながらも、時間を重ねる中で信頼関係が芽生えていきます。
王族という立場を超えて、1人の人間として支えてくれる存在に出会えたことは、スピーチ克服への大きな一歩となりました。
第二次世界大戦開戦のスピーチ
1939年、イギリスがドイツに宣戦布告を行い、ついに第二次世界大戦が始まります。
国王として、国民に向けてラジオを通じた重要なスピーチを行う必要がありました。
このとき、長年の訓練とローグの支えにより、ゆっくりと確実に言葉を紡いで演説を成功させました。
明確な言葉で国民に希望を伝えようとする姿勢が、多くの人々の心を動かしました。
国民との連帯を選んだ日々
戦時中も王宮を離れず、空襲の続くロンドンにとどまりました。
国民と同じ苦しみを味わいながら過ごす姿勢は大きな信頼につながり、「共にいる王」として国民からの支持を集めていきます。
王族として特別扱いを受けることなく、人々と同じ目線で困難な時代を乗り越えようとした姿は、今なお高く評価されています。
晩年とエリザベス2世への継承
戦後もしばらく国王として国を支え続けましたが、体調を崩し、1952年に亡くなります。
後を継いだのが長女のエリザベスで、エリザベス2世として即位しました。
病と闘いながらも、王としての務めを果たし続けたその姿は、多くの国民にとって理想のリーダー像となりました。
弱さを受け入れた先にあったもの
ジョージ6世は、決して生まれながらにして理想の国王だったわけではありません。
吃音に苦しみ、人前で話すことに不安を抱え続けながらも、責任を放棄することなく、誠実に務めを果たしていきました。
映画『英国王のスピーチ』が感動を呼んだ理由のひとつは、この「弱さを持ったまま前に進む姿」にあります。
特別な力ではなく、努力と支えによって成し遂げたスピーチだからこそ、多くの人の心に響くのです。
映画「英国王のスピーチ」映画と実話の比較
映画で描かれた内容と実際の歴史上の出来事を比較しながら、どこが本当で、どこに違いがあるのかを詳しく紹介します。
ライオネル・ローグとの出会い方
映画では、ジョージ6世の妻エリザベス(後の皇太后)が独自に言語療法士ライオネル・ローグを探し出し、秘密裏に紹介を受けたという流れで物語が始まります。
実話でもローグとの出会いはエリザベスの紹介によるものですが、実際には公式の推薦や紹介を経ており、映画ほど“内緒の出会い”ではなかったと言われています。
また、映画では最初からローグが治療の主導権を握っていたかのように描かれていますが、現実では王室側との信頼関係が築かれるまでに一定の時間を要したようです。
二人の関係性と呼び方
映画では、ローグがジョージ6世に対して「バーティ」と愛称で呼び、親しい関係を築いていく様子が印象的に描かれています。
一方で、実話ではローグが国王を「バーティ」と呼んだ証拠は確認されていません。
実際の治療セッションでは、ローグはあくまで礼儀を重んじた対応をしており、親しみはあってもあくまで公的な関係に近かったと考えられています。
ただし、互いへの尊敬や友情が存在していたことは記録にも残っており、長年にわたる信頼関係が築かれていたことは事実です。
スピーチ直前の緊張感と場面
映画のクライマックスでは、ジョージ6世が第二次世界大戦開戦にともない、国民に向けてスピーチを行う場面が描かれます。
ローグがすぐそばでサポートしながら、ラジオのマイクの前で一語一語を大切に話す姿は、多くの観客の胸を打ちました。
実際の歴史でも、このスピーチは非常に重要な出来事でした。
ローグもラジオ局に同行し、録音ブースの外側から見守っていたとされています。
ただし、映画のようにスピーチの最中に逐一指導したという記録はなく、演出上の工夫として加えられている部分です。
ローグの資格や立場について
映画では、ローグが正規の医学的資格を持っていないことがたびたび取り上げられます。
実際にもローグは医師ではなく、俳優や演出家の経験を活かして言語療法を行っていました。
しかしながら、治療法には一定の効果があり、ジョージ6世以外にも多くの患者を持っていた実績があります。
映画はその異色のキャリアを際立たせることで、物語としてのドラマ性を高めています。
スピーチ以降の二人の関係
映画のラストでは、スピーチの成功をきっかけに、国王とローグの友情が永遠のものとして描かれます。
そして「その後も二人は生涯にわたり親交を続けた」とナレーションが入ります。
これは実話にもとづいています。
ジョージ6世とローグはその後も長く交流を続け、ローグは国王の信頼できる相談相手として、戦後まで公私にわたって関係を維持していたことがわかっています。
ローグの息子が保管していた日記や記録にも、その信頼の深さが記されています。
映画と実話のバランス
映画『英国王のスピーチ』は、史実をもとにしながらも、人物の心情描写や関係性の深さを強調するために、一部に脚色が加えられています。
とはいえ、大きな出来事の流れや、ジョージ6世が吃音に悩みながらも努力を重ねた姿、ライオネル・ローグの存在が大きな支えとなった事実は、実話と一致しています。
映画「英国王のスピーチ」ジョージ6世の生き様
正直なところ、映画を観るまではジョージ6世の名前すら知らなかったんです。
でも映画を観終わってから、思わず彼のことをもっと調べたくなってしまいました。
時代の流れに翻弄されながらも、王としての責務を果たそうとする姿は、見ていて胸を打たれました。
誰かに与えられた役割を、自分の意思で引き受けるというのは簡単なことではありません。
ジョージ6世が王位を継ぐことになったのは運命だったかもしれませんが、それをどう受け止め、どう行動するかは自分で決めたことです。
その姿勢に、人としての芯の強さを感じました。
映画から見える人間関係の奥深さ
『英国王のスピーチ』は、ただの歴史映画ではないと思います。
吃音というコンプレックスを通して、ジョージ6世とライオネル・ローグの関係が少しずつ変わっていく過程には、言葉では表せない温かさがありました。
最初はお互いを信用していなかった関係が、いつのまにか信頼へと変わっていく。
その過程が丁寧に描かれていて、観ているこっちも知らず知らずのうちに心を動かされてしまいました。
実話ベースの映画が与える影響
こういう実話ベースの映画って、観終わったあとに妙な説得力が残るんですよね。
「これ、本当にあったんだ」と思うと、ただのフィクションよりも深く心に残ります。
ジョージ6世のような人物が、現実に存在していたという事実が、映画を通して実感として伝わってくるのです。
『英国王のスピーチ』は、史実に基づいていながらもエンタメとしても成立している、非常にバランスの取れた作品だと感じました。
歴史を知るきっかけになる映画
この映画をきっかけに、第二次世界大戦前後のイギリスの政治状況に興味が湧いたという人も多いのではないでしょうか。
私もその一人です。戦争や政治の話って、どうしても堅苦しい印象があるけれど、こうして人間ドラマとして描かれると一気に距離が縮まります。
ジョージ6世の視点から見る戦争の始まりというのは、また違ったリアリティがあります。
戦うことを決めた側の苦悩というのは、普段ニュースではなかなか伝わってこない部分です。
まとめ
『英国王のスピーチ』は、吃音というテーマを扱いながら、国王としての苦悩や人間関係、時代の背景までを見事に詰め込んだ作品です。
実話に基づいているからこそ感じる重みと、映画ならではの演出が絶妙に絡み合って、観終わったあともずっと心に残りました。
ジョージ6世という人物を知ることで、歴史に対する視点も少し変わるかもしれません。
現代とはまったく違う時代を生きた人物が、同じように悩み、苦しみ、それでも前に進もうとしていた。
その姿は、今を生きる自分たちにも何かしらの力を与えてくれるような気がします。
歴史に詳しくなくても楽しめるし、むしろ知らないからこそ得られる驚きもある。
そんな作品に出会えたことが、ちょっと嬉しかったりもします。
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